持久力の高い高齢者は作業記憶も優れる:新たな脳内メカニズムを解明
Digital PR Platform / 2024年5月29日 14時5分
■対象と方法
研究は高齢者47人(65-74歳、うち女性29人)と若年成人49人(18-24歳、うち女性23人)を対象に実施しました。作業記憶能力の評価のため、参加者はパソコンで言語性および空間性Nバック課題⁴を行いました。これらの課題は作業記憶の負荷がない低難度の0バック条件、負荷の低い1バック条件、負荷が高い高難度の2バック条件に分かれていました。課題成績として、反応時間と正解率を評価しました。課題中は、近赤外光脳機能イメージング装置で前頭前野の酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン濃度の変化を測定し、脳活動を評価しました。また、高齢参加者の有酸素能力評価のため、自転車エルゴメーターによる運動負荷試験によって換気性作業閾値⁵を測定しました。
■結果
高齢者と若年成人で、言語性および空間性Nバック課題の成績や課題中の脳活動を比較した結果、高齢者は若年成人よりも成績が低く(反応時間が長く、正解率が低い)、さらに高難度の課題中、高齢者では若年成人よりも前頭前野の多くの部位が活動していることがわかりました。この結果から、若年成人に比べて高齢者で作業記憶能力が低下していることと、高難度の課題を遂行するために前頭前野の広い範囲を動員していることを確認しました。次に、高齢者において有酸素能力と課題成績、脳活動の関係性を見ると、有酸素能力が高い高齢者ほど高齢者特有の脳活動(若年成人では課題中に活動が見られなかった脳領域の活動)が活発で、それが課題成績の高さ(高難度条件の反応時間)と関連している可能性が示されました。
■まとめ
本研究で、高齢者は若年成人に比べて、前頭前野の広範囲を代償的に動員して高難度の課題を遂行しており、有酸素能力の高い高齢者では、より前頭前野の代償的な活性度が高く、これにより、有酸素能力の低い高齢者より優れた作業記憶能力を発揮している可能性を確認しました。
本研究の成果は、なぜ有酸素能力の高い高齢者の作業記憶能力が高いのか、という疑問にこたえる脳機能メカニズムの解明に寄与する可能性があります。今後、運動トレーニングによる有酸素能力、作業記憶能力、脳活動の変化の関係性を見ることで、これらの因果関係が解明されることが期待されます。
■発表論文
・掲載誌:Imaging Neuroscience
・タイトル:Neural mechanisms of the relationship between aerobic fitness and working memory in older adults: an fNIRS study
・著者:Kazuki Hyodo, Ippeita Dan, Takashi Jindo, Kiyomitsu Niioka, Sho Naganawa, Ayako Mukoyama, Hideaki Soya, Takashi Arao
・DOI番号: https://doi.org/10.1162/imag_a_00167
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