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【東京医科大学】悪性神経膠腫に対する組織内光線力学的療法(i-PDT)の実用化に向けた基礎実験において有用性を確認 ~悪性脳腫瘍に対する新規治療法の開発に期待~

Digital PR Platform / 2024年6月4日 14時5分

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 東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)脳神経外科学分野 河野道宏主任教授、永井健太助教の研究チームが、分子病理学分野 黒田雅彦主任教授、慶應義塾大学 理工学部 電気情報工学科 小川恵美悠准教授らと共同で悪性神経膠腫に対する組織内光線力学的療法(i-PDT)の実用化に向けた前段階の動物実験で有用性を示すことができました。
 本研究は2024年4月21日に、米国の総合生命科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。





【本研究のポイント】
● 当院では医師主導治験を経て2014年に世界に先駆けて悪性神経膠腫の光線力学的療法(PDT)の保険治療を開始し、これまでに100例以上施行してきた。
● 既存方法では表面照射型のため、手術による全摘出が必要であり、深部など摘出困難な部位での施行が困難であった。
● 今回我々は摘出困難な部位を対象とした、腫瘍組織内に細径ファイバーを穿刺し内部よりPDTを行う組織内PDT(i-PDT)の実用化に向けた基礎実験を開始し、その有用性が確認できた。

【研究の背景】
 悪性神経膠腫は5年生存率15%とすべての癌腫の中でも非常に予後が悪く、また過去10年でブレイクスルーとなる治療法も確立されておらず、新規治療法が望まれている分野である。さらに脳深部や機能局在がある部位など摘出困難な部位においては生検のみで化学放射線療法を施行するしか方法がなく、予後は更に短縮する傾向にあった。現状では有効な治療手段の存在しないこれらの悪性神経膠腫に対する新規治療法として、摘出を前提としない組織内PDT(i-PDT)が以前より有望視され、海外でも良好なデータが散見されるようになっていた。そこで今回我々は、国産の光感受性物質である「タラポルフィンナトリウム(レザフィリン®)」を用いたi-PDTの実用化へ向けた動物実験を施行した。

【本研究で得られた結果・知見】
 ヌードマウスの皮下へ悪性神経膠腫細胞を移植し、10mm程度の腫瘍塊を形成した時点でタラポルフィンナトリウムを投与。90分後に腫瘍中心へ細径ファイバー(図1)を挿入し、664nmの波長のレーザー照射を行った。
 エネルギー密度は500J/cm²、100J/cm²、50J/cm²の3群で施行し、図2-Bの100J/cm²1025秒が最も効率よく腫瘍細胞への殺腫瘍効果を確認した。また同一エネルギー密度であれば長時間の照射がより効果的であった。この結果よりPDTは、短時間高エネルギー照射より長時間低エネルギー照射の方が、より効率的に殺腫瘍効果が得られることが明らかとなった(図2)。
 殺腫瘍効果が得られた範囲を病理学的な詳細検討を行った結果、大半の細胞はアポトーシスの誘導による腫瘍死で、光源近傍ほど強い傾向にあることが明らかとなった。また組織の血管の評価を行うと、殺腫瘍効果が認められた範囲での血管内皮障害及び白色血栓の形成が認められた。このことから光源から離れた部位では、梗塞による二次的な腫瘍死があることが示唆された。

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