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光エネルギーを保持する有機配位子で修飾した金属クラスターを開発し、太陽光照度で効率20%を超える赤色光-青色光アップコンバージョンを実現

Digital PR Platform / 2024年6月5日 14時5分

光エネルギーを保持する有機配位子で修飾した金属クラスターを開発し、太陽光照度で効率20%を超える赤色光-青色光アップコンバージョンを実現



立教大学(東京都豊島区、総長:西原廉太)大学院理学研究科化学専攻の有馬 大地 氏(博士後期課程1年次、学術振興会特別研究員DC1)と三井 正明 同研究科教授、静岡大学大学院理学研究科の小林 健二 教授らを主とした研究グループは、吸収した光エネルギーを保持する役割を担う有機配位子(三重項媒介配位子)でAu2Cu6(S-Adm)6構造体を修飾した金属クラスターの増感剤Au2Cu6(S-Adm)6[P(DPA)3]2を開発し、地表での標準的な太陽光照度で効率20%を超える赤色光から青色光への光エネルギー変換(フォトンアップコンバージョン)を実現しました。




この新しい増感剤により、太陽光や室内照明などの比較的弱い強度の光でも、低エネルギーの光子をそれよりも高エネルギーの光子へと高効率に変換することが可能となりました。今後、太陽光をはじめとする光エネルギーの有効利用に貢献することが期待されます。本研究成果は、アメリカ化学会の最高峰のジャーナルであるJournal of the American Chemical Societyに掲載され、掲載号のSupplementary Journal Coverにも選定されました。
(添付:Au2Cu6(S-Adm)6[P(DPA)3]2)
 

【研究の背景】


三重項−三重項消滅(TTA)に基づくフォトンアップコンバージョン(TTA-UC; Triplet-Triplet Annihilation Photon Upconversion)は、長波長の光を短波長の光に変換する手法であり、多岐にわたる用途への応用が期待される光エネルギー変換技術として注目されています。TTA-UCでは、増感剤(S)と発光体(E)を組み合わせた系が利用され、図1に示すように、増感剤は入射光を吸収し、そのエネルギーを発光体へと受け渡します。この励起エネルギーの受け渡し過程は三重項エネルギー移動(TET)とよばれ、この効率が高いほど発光体の励起三重項状態(3E*)が多く生成され、TTAが促進されます。その結果、発光体の励起一重項状態(1E*)が多数生成され、入射光(hva)よりも短波長(高エネルギー)のUC発光(hvUC)が得られます(hva < hvUC)。
  
(添付:図1: Au2Cu6(S-Adm)6構造体をP(DPA)3三重項媒介配位子で修飾したAu2Cu6(S-Adm)6[P(DPA)3]2クラスター増感剤によるフォトンアップコンバージョンの概念図。Au2Cu6コアが入射光(hva)を吸収し、その光エネルギーを三重項媒介配位子に高速に移動させ、長寿命に保持することに成功。さらにそのエネルギーを発光体に受け渡すことにより、青色光(hvUC)への変換を達成)
 
このようにTTA-UC機構は、発光体2分子間のTTAに基づく2光子過程であるため、最大のUC効率(ΦUC)は50%です。高効率化の鍵となるのは、増感剤における三重項生成量子収率(ΦT)、増感剤と発光体との間のTET量子収率(ΦTET)、発光体のTTA量子収率(ΦTTA)の向上です。本研究では、100%のΦTとΦTETを達成するため、図1に示すAu2Cu6(S-Adm)6[P(DPA)3]2(S-Adm = 1-adamanthanethiolate; DPA = 9,10-diphenylanthracene)を新たな増感剤として開発しました。

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