【神奈川工科大学】バイオ×情報工学!異常細胞の自動検知と迅速なDNA損傷性評価を可能にするAI-Driven細胞分析システムを開発 〜染色体異常を検出する遺伝毒性試験や環境汚染物質調査への活用に期待〜
Digital PR Platform / 2024年6月11日 14時5分
神奈川工科大学バイオメディカル研究センターのグループは、情報工学と生物実験の融合研究により、AI技術を用いて観察画像中の異常細胞の分類と検知を自動的に行うシステムを開発し、染色体異常を検出するための遺伝毒性試験の迅速化を実現しました。
1.本研究のポイント
■DNA損傷を検出するための標準的な遺伝毒性試験を短時間化するソフトウェアの開発
■事前に学習させたArtificial Intelligence (AI)を使用したシステム
■技術者のスキルによる不確実性を排除し、労力を大幅に削減することができる
■設定や最適化の工程数を大幅に削減、誰もが簡単に結果を得ることが可能
■生物・地球環境における変異原となる化学物質の特定や評価、それによりもたらされるDNA損傷の研究に貢献
この成果は、日本環境変異原ゲノム学会の学会誌『Genes and Environment(G&E)』に論文発表し、Featured Articleに選出されました。
2.研究背景
小核試験は、異数性*¹誘発物質や染色体構造異常誘発物質によるDNA損傷を検出するための標準的な遺伝毒性試験です。試験手法と結果の解釈は単純ですが、顕微鏡視野内の全細胞と小核核含有細胞を手動でカウントを行うことが多く、観察者の技量や数え間違いなどに結果が大きく左右されてしまう、多大の観察時間を必要とし労力を要する、などの問題があります。そのため、小核を自動で計測するソフトは、この分野に多大な貢献をもたらすことができます。小核の自動カウントはいくつかのソフトウェアが存在しますが、高額で入手が困難であったり、専用ではないため最適化のための操作が煩雑なものが多い状況がありました。
3.研究内容・成果
小核試験の結果は、小核を形成する細胞(MN細胞)の数に基づいて計算されます。このため、培養細胞1000個の間期*²に存在するMN細胞の数を顕微鏡下で数えることになりますが、サンプルの数が増えるとこの作業はかなりの長時間を必要とします。目視観察による誤りを避け、細胞計測速度を上げるために、これまでにもいくつかの改良方法が提案されています。本研究では、細胞の正常/異常を分類するシステムとして深層学習の一種であるCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みネットワーク)を用い、事前に正解のわかっている正常および異常細胞の画像を用いて学習させ、学習を終えたArtificial Intelligence (AI)を使って解析対象の画像に適用する、小核試験に特化した簡便で使いやすい小核/細胞検出アプリケーションの開発をおこないました。
アクリジンオレンジで染色された細胞のカラー小核グラフのRGBチャネルを分離し、細胞核と小核核はGイメージをスケーリングすることで検出され、細胞質はRとGのイメージの合成イメージから認識されます。最終的に、細胞質と小核核が重なる細胞を小核核細胞として識別し、アプリケーションは小核核細胞の数と全細胞数を表示します(図)。開発したシステムは、手動で測定した値と比較して同等の結果を与えたことから、顕微鏡画像内の全細胞数と小核核形成細胞を正確に検出することができ、手動カウントと同じ精度を達成していました。また、解析に必要な時間は手動の10%以下に削減されました。小核核数の精度は細胞染色条件に依存することから、ソフトウェアには閾値、ノイズ除去、バイナリなどのパラメータを手動で最適化して最良の結果を得るためのオプションも用意しました。
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