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追手門学院大学の高見剛教授らの研究チームが全固体フッ化物イオン電池に向けたフッ化物イオンとアニオン電子の新たな交換反応を実証 ― フッ化物イオン伝導体開発の新境地へ

Digital PR Platform / 2024年6月13日 14時5分

【研究の背景】
 全固体フッ化物イオン電池の固体電解質の開発に向けては、実用化できる多結晶状態において、室温で高いフッ化物イオン伝導率を示す材料の開発が必要である。現在開発されている固体電解質の動作温度は140℃以上とされており、フッ化物イオンの伝導率向上に向けた反応機構の解明や新材料の開発が求められている。
 2021年に同研究チームは、2次元層状物質である六方晶窒化ホウ素をフッ素化した単結晶状態のフッ化物イオン伝導体において、世界最高レベルのフッ化物イオン伝導率を達成し、フッ化物イオンが室温状態で高い伝導率を示す可能性があることを実証した[T. Takami* et al., Materials Today Physics 21, 100523 (2021)]。
 こうした研究から電子が2次元の格子間に存在する電子化物に着目し、これまで一般的とされてきたバリウム・ランタン・フッ素を用いた化合物(La0.9Ba0.1F2.9)に変わる、新材料の開発を進めてきた。直近では、全固体フッ化物イオン電池の正極材料(Sr3Fe2O5F2)において、フッ化物イオンの二次元的な拡散を実証[Y. Wang, T. Takami* et al., Chem. Mater. 34, 10631 (2022)]した。また、フッ化物イオン伝導体のレビュー論文を出版[T. Takami* et al., J. of Phys.: Condens. Matter 35, 293002 (2023)]するなど本分野を先導している。

【研究内容と成果】
 今回のイオン伝導体の開発では、固相反応法(※5)を用いて窒素を含むBa2-xAxNF1-x(A=Na, K)を合成。その過程では、Ba不純物を抑制するため、原料粉として窒素を含むBa3N2を選択する工夫を凝らしている。出発原料粉であるBa3N2, BaF2, KF, NaFをアルゴン雰囲気のグローブボックス中で混合し、その後、これらの粉末をペレット状に圧粉し、モリブデンホイルで包んだ状態で、アルゴン雰囲気中にて焼成している。
 これらにナトリウム(Na)またはカリウム(K)を加えることで、電気伝導率が増加傾向を示した。これは、Ba2-xAxNF1-x(A=Na, K)中のF空孔量xが置換量xとともに増加したためであり、中性子回折測定(※6)の結果、Kの固溶限界組成付近で、電子0.1個分が不足し電気的中性の条件から外れた組成Ba1.8K0.2NF0.7であることがわかった。さらに、第一原理計算(※7)を用いることで、電子が格子間にアニオン電子として存在するBa1.8K0.2NF0.7∙0.1e-であることが示唆された。
 これらの結果から、格子間にあるアニオン電子がスムーズなフッ化物イオンの伝導を阻害していると着想し、フッ化キセノンでアニオン電子とフッ化物イオンとの交換反応を試みたところ、中性子回折測定によって交換反応が実証され(図1)、インピーダンス測定ではフッ化物イオンが伝導したことを示した。このように、電子化物由来の物質群で、フッ化物イオン伝導の発現を初めて実証し、固体電解質としての可能性をひらいた。

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