追手門学院大学の高見剛教授らの研究チームが全固体フッ化物イオン電池に向けたフッ化物イオンとアニオン電子の新たな交換反応を実証 ― フッ化物イオン伝導体開発の新境地へ
Digital PR Platform / 2024年6月13日 14時5分
【今後の展望】
結晶中に残留するアニオン電子がフッ化物イオンと交換することで、フッ化物イオン伝導が出現するというブレークスルーを得ることができた。これはフッ化物伝導体の固体電解質における電子化物類似体の可能性について貴重な洞察を与えるものであり、今回実証した交換反応をベースに、伝導率の向上を目指した研究開発の広がりが期待される。
【研究者コメント】
電子化物由来の物質において、初めてイオン伝導の発現を実証することができました。特に、実験と理論の共創により、交換反応の機構解明を成し遂げました。このことは、電子化物の新しい機能としてイオン伝導の可能性が示唆されたということであり、フッ化物イオン伝導体の新たな探索対象としての嚆矢となります。
【論文情報】
・論文タイトル: Topochemical fluoride exchange reaction with anionic electrons toward fluoride-ion conduction in layered Ba2-xAxNF1-x (A = Na, K)
・著者: C.Pattanathummasid, N.Yasufuku, R.Asahi, A.Kutana, M.Hagihara, K.Mori, T.Takami(責任著者)
・雑誌名: Chemistry of Materials
・DOI: 10.1021/acs.chemmater.4c00716
・公開日: 2024年6月11日(米国時間)
・URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.chemmater.4c00716
本研究は、主に以下の事業の支援を受けて実施された。
・科研費 基盤研究(B), 22H02167
・加藤科学振興会, KJ-3101
・三菱財団 自然科学研究助成, 202210032
・日立財団 倉田奨励金, 1530
・科研費 学術変革領域研究(A), 21H05560
・高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所のプロジェクト型研究課題, 2019S05
・マテリアル先端リサーチインフラ, JPMXP1222MS1012
【用語説明】
(※1)固体電解質: 電場下でイオンが拡散することのできる固体の総称。蓄電池において、正極・負極の間でイオン輸送を担う役割を果たす。
(※2)アニオン電子: 電子がアニオン(陰イオン)のように、格子間に位置する。通常、電子は軌道に収容されているため、アニオン電子は特異である。
(※3)フッ化物イオン伝導率: フッ化物イオンが伝導種となる場合のイオン伝導率(S cm-1)。
(※4)電子化物: 物質の中で電子がアニオンとして特定の位置に固定されて存在する化合物のこと。通常、電子は原子や分子の周りを自由に移動するが、電子化物では電子が特定の場所に固定され、これが物質の特性に大きな影響を与える。
(※5)固相反応法: 出発原料の粒成長を利用し、溶融することなく、固相から直接目的の物質を得る方法である。
(※6)中性子回折測定: 中性子線の回折現象を利用して、物質の結晶構造や磁気構造の解析を行う手法である。エックス線に比べ、フッ素など軽元素の検知に有効である。
(※7)第一原理計算: 実験データから得た経験変数を用いずに、計算対象となる原子の種類・数と初期変数のみを用いて、量子力学に基づいて電子状態を計算する手法。
▼本件に関する問い合わせ先
・追手門学院大学 理事長室 広報課
TEL: 072-641-9590
FAX: 072-641-9645
E-mail: koho@otemon.ac.jp
・名古屋大学 旭 良司
TEL: 052-747-6869
FAX: 052-788-6169
E-mail: asahi.ryoji.d9(at)f.mail.nagoya-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/
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