相同組換えに依らない新たなゲノム編集メカニズムを発見
Digital PR Platform / 2024年6月18日 18時0分
横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 分子生物学研究室の足立典隆教授と斎藤慎太助教は、これまで知られていなかった新たなゲノム編集メカニズムを発見し、その特性と制御機構の一端を明らかにしました。本研究の成果は、今後のゲノム編集研究やDNA修復研究に重要な示唆を与えるだけでなく、医療上有用なヒト細胞における正確かつ効率的なゲノム編集につながることが期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌「Nature Communications」に掲載されます。(日本時間2024年6月18日18時)
研究成果のポイント
相同組換えに依存しない遺伝子ターゲティング機構が存在する。
この反応は、DNA配列の相同性が100%でなくても起こる。
相同組換えと異なり、この反応は細胞周期を通じて起こる。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/89968/500_263_20240617130313666fb581b3ed1.jpg
図1 DNAベクターを細胞に導入した際に起こる反応
細胞にベクターを導入するとNHEJまたはTMEJによって稀にランダム挿入が起こる。
DNAの相同性を介した遺伝子ターゲティング反応はさらに低い頻度でしか起こらない。
研究背景
DNAベクターを細胞に導入すると、ゲノム中のランダムな場所に挿入されることがあります [1]。こうしたランダム挿入反応にはエンドジョイニングと呼ばれる機構(NHEJとTMEJ)が関わっており、いずれもDNA配列の長い相同性を必要としません [1, 2]。一方、ゲノムDNAと相同な配列をもつベクターを細胞に導入すると、効率はとても低いものの、相同なDNA配列を利用した組換えによりゲノムDNA中の狙った位置にベクターを挿入することができます。これを遺伝子ターゲティングと呼び、目的とする遺伝子を破壊・改変したり、強制発現させたい遺伝子をノックインすることができます。
これまで遺伝子ターゲティングはRad51というタンパク質に依存した相同組換えによってのみ起こると考えられてきました。相同組換えは細胞周期のS期〜G2期(つまりDNA複製後)でしか機能しないため、非増殖細胞で遺伝子ターゲティングを行うのは不可能と信じられてきました。また、遺伝子ターゲティング反応はDNAの相同性に依存しており、DNA配列間に少しでもミスマッチがあると著しく頻度が低下するという技術的な問題もありました。
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