相同組換えに依らない新たなゲノム編集メカニズムを発見
Digital PR Platform / 2024年6月18日 18時0分
研究内容
今回、足立教授と斎藤助教は、相同組換えを欠損したヒト細胞で稀に起こる遺伝子ターゲティング反応の存在を明らかにし、(1) この反応がRad51非依存性であること、(2) Rad52と呼ばれるタンパク質が関わっていること、(3) ゲノムDNAと相同な配列をもつDNAベクターに変異を入れても全体の5%のミスマッチであれば許容する(つまり、20塩基対ごとに1箇所ミスマッチが存在していても頻度が低下しない)ことを突き止めました。また、特殊なCRISPR/Cas9システム(DNA中の狙った場所を切断できる)を構築して解析を行ったところ、相同組換えとは異なり、Rad51非依存性の遺伝子ターゲティングは細胞周期のG1期、つまりDNA複製前の状態の細胞でも起こることがわかりました。実際、増殖スピードがとても遅い細胞でも遺伝子改変が可能であり、この反応はRad51非依存性でした。
遺伝子ターゲティングに2つの異なるメカニズムが存在することがわかったため、足立教授と斎藤助教は、これらが細胞内でどのように制御されているのかを引き続き解析しました。その結果、これまで遺伝子ターゲティングの促進因子として知られていた「① ゲノムDNA中のターゲット部位での切断」、「② BLMと呼ばれるDNA巻き戻し酵素の阻害」のいずれもがRad51依存性・非依存性反応の双方を促進していることが判明しました。さらに、Rad51非依存性反応の頻度は通常とても低いものの、上記の①、②および別の "リミッター" を外す(つまりMsh2タンパク質を除去する)ことで、その頻度がRad51依存性反応と同レベルにまで上昇することが明らかになりました。
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/89968/500_209_20240617130320666fb588635bd.jpg
図2 Rad51依存性および非依存性遺伝子ターゲティングの特徴の比較
今後の展開
ゲノムを自在に改変する技術はさまざまな面で脚光を浴びており、その注目度や科学的重要性の高さは2020年のノーベル化学賞(CRISPR/Cas9)や2007年のノーベル医学生理学賞(遺伝子ターゲティングとノックアウトマウス)からもうかがい知ることができます。とはいえ、遺伝子ターゲティングにはまだまだわかっていないことが多く、それは今回の発見すなわち第2のメカニズムの発見まで30年以上もかかったことからも明らかです。今後の研究により、遺伝子ターゲティングのメカニズムや制御機構の全貌が明らかになれば、さらなる効率化と医療への応用が可能になっていくものと期待されます。
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