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蔵付きバクテリアが日本酒の味に影響する--清酒酵母の遺伝子発現に対する蔵付きバクテリアの影響を解明

Digital PR Platform / 2024年6月20日 15時30分

蔵付きバクテリアが日本酒の味に影響する--清酒酵母の遺伝子発現に対する蔵付きバクテリアの影響を解明

東洋大学(東京都文京区/学長・矢口悦子)食環境科学研究科の西田洋巳研究室は、各酒蔵に棲みつき、日本酒造りの過程で混入するバクテリア(蔵付きバクテリア)の機能に関する基礎および応用研究を行っています。この度、清酒酵母と蔵付きバクテリアの相互作用を解明し、日本酒の味や香りに及ぼす影響を明らかにする重要な成果を発表しました。

■研究概要
これまでの研究では、清酒酵母と蔵付きバクテリアの共培養実験および実際の酒蔵での試験醸造を行い、蔵付きバクテリアが日本酒の味に与える影響を調査してきました。今回の研究では、きょうかい酵母K1401株(清酒酵母の1つ)と富山県南砺市の成政酒造の蔵付きバクテリアであるコクリアTGY1127_2株を共培養し、その影響を網羅的に遺伝子発現解析しました(注1)。

■主な研究結果
・遺伝子発現の変化:
清酒酵母K1401株と蔵付きコクリアTGY1127_2株の共培養により、清酒酵母の遺伝子発現に顕著
な変化が確認されました。具体的には、細胞周期や胞子形成に関わる遺伝子の発現が促進され、代謝
に関わる遺伝子の発現が抑制されることが明らかになりました。(図1と2)

・比較解析:
酵母との相互作用が見られる乳酸菌と酵母との共培養に関する論文と今回の蔵付きコクリアと酵母の結果を比較しました。その結果、蔵付きコクリアによって発現が促進した71遺伝子(図1)中2遺伝子、発現が抑制した61遺伝子(図2)中2遺伝子のみが乳酸菌による遺伝子発現変化と同じでした。このことは蔵付きコクリアと清酒酵母の相互作用は乳酸菌と酵母の相互作用と異なることを示しています。

・影響の解明:
清酒酵母は共存在する蔵付きバクテリアにより遺伝子制御を変化させることが確認されました。これにより、細胞外への物質の排出や細胞内への取り込みに違いが生じ、日本酒の香りや味に影響を与える可能性が示唆されました。

日本には数千の酒蔵(醸造会社)が広く存在しており、それぞれの酒蔵には異なる蔵付きバクテリアが存在し、日本酒造りの過程で混入していると考えられています。今回の結果は、蔵付きバクテリアが日本酒造りの主役である清酒酵母の遺伝子発現に影響を与えることを明らかにしました。それぞれの酒蔵における日本酒の味や香りの特徴に蔵付きバクテリアが関係していることを強く示唆する結果となりました。

■今後の展望

今後の研究では、清酒酵母の遺伝子発現の違いと日本酒の味や香りの関係をさらに明らかにする予定です。複数のバクテリアと清酒酵母の共培養実験を行い、その結果をもとに試験醸造を実施します。最終的には、蔵付きバクテリアを活用した新しい日本酒造りの提案とともに、伝統文化の継承に貢献することを目指しています。

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