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【大阪大学】"脂肪肝から肝がんになりやすい人"を見分ける新指標 ― 肝がんの早期発見・早期治療へ期待

Digital PR Platform / 2024年6月20日 14時5分

【研究の背景】
 脂肪肝は世界各国で増加しており、本邦では成人の4人に1人が脂肪肝と言われています。特に生活習慣病を背景とした脂肪肝が増加しています。脂肪肝の増加から、近年は脂肪肝を背景とした肝がんも増加しています。肝がんの早期発見は予後の改善に重要ですが、腹部超音波検査などの画像診断や腫瘍マーカーを用いた定期的な見張り(サーベイランス)が有効です。脂肪肝が進んで肝臓が硬くなり、肝硬変に近づくと高い頻度で肝がんが発生します。そのため肝臓が硬い患者は肝がんサーベイランスを受けることが推奨されています。しかし、脂肪肝では少し硬い程度でも一定頻度で肝がんが発生します。このような少し硬い程度の脂肪肝の患者さんは非常に多く、費用対効果の観点から、肝がんサーベイランスをうけるべき高リスク患者を特定する新たなバイオマーカーの開発が求められていました。

【研究の内容】
 竹原教授らの研究グループでは、肝がんの既往がなく肝生検(※5)を行った4病院(大阪大学医学部附属病院、市立貝塚病院、佐賀大学医学部附属病院、大垣市民病院)518名の生活習慣病を背景とした脂肪肝(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease: MASLD(※6))患者を対象として、保存血清を用いてGDF15値を測定し、その後の肝がん発生率、非代償性肝疾患イベント(※7)による入院発生率、死亡率との関係を検討しました。その結果、血中のGDF15値は、肝生検で評価した肝臓の硬さや、肝臓の硬さの危険指標(FIB-4 index)と独立して、肝がん発生のリスク因子であることを見出しました。
 肝生検にて評価した肝臓の硬さ別に肝がんの発生を検討したところ、肝臓がかなり硬くなっていた患者(F3-F4)からは高い頻度で肝がんが発生しましたが、そこまで硬くなかった患者(F0-F2)からも肝がんが発生しました。しかしいずれの患者も、GDF15値が低ければ(<1.75ng/ml)、5年以内に肝がんは発生していませんでした(図2)。
 肝生検を必要としないFIB-4 indexによる肝臓の硬さ危険指標別に検討したところ、低リスク(FIB-4 index<1.3)の患者からは、肝がんだけでなく、非代償性肝疾患イベントによる入院、死亡はほとんど発生しませんでした。一方、硬さ危険指標中リスク以上(FIB-4 index>1.3)の患者では、血中のGDF15値が高ければ(>1.75ng/ml)、その後の肝がん発生率、非代償性肝疾患イベントによる入院発生率、死亡率のいずれもが高いことが分かりました(図3)。
 次に、上記結果を確かめるため、別の病院(北海道大学病院)に通院している216名の脂肪肝(MASLD)患者を対象として検証しました。その結果、この患者集団でも血中のGDF15値が高く(>1.75ng/ml)、FIB-4 indexも高ければ(>1.3)、その後の肝がん発生率、非代償性肝疾患イベントによる入院発生率、死亡率のいずれもが高いことが分かりました(図4)。
 最後に、さらに別の施設(大阪中央病院)において人間ドックを受診した方で生活習慣病を背景とした脂肪肝を認めた364例の血中のGDF15値を測定しました。その結果、18人(4.9%)が血中GDF15高値(>1.75ng/ml)、 86人(23.6%)がFIB-4 index 高値(>1.3)であり、いずれも高値であったのはわずか10人(2.7%)でした。

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