【青山学院大学】理工学部 長谷川美貴教授と千葉大学国際高等研究基幹・大学院薬学研究院の原田真至准教授の共同研究グループが、新薬開発に役立つ複雑な化合物の1工程合成に成功。〜ランタノイドが拓く創薬と環境の未来〜
Digital PR Platform / 2024年6月24日 20時5分
千葉大学国際高等研究基幹・大学院薬学研究院の原田真至准教授と、青山学院大学理工学部の長谷川美貴教授の共同研究グループは、「ランタノイド」注1)を用いた触媒により、医薬品の開発に重要な複雑な構造を持つ化合物をたった1工程で高精度に合成することに成功した。同研究の成果によって、医薬品の有効成分を効率的に合成できるようになることが期待される。同研究成果は、2024年5月22日(水)に、アメリカ化学会の学術誌"the Journal of Organic Chemistry"で公開された。
■研究の背景:
新薬の開発には、複雑な構造を持つ化合物が必要不可欠です。特に、「カルバゾール」注2)と呼ばれる化合物群は、多くの生物活性を持つことから注目されている。例えば、天然由来の抗がん剤であるビンブラスチンはカルバゾールを部分構造として持っており、強力な薬理活性を示す。しかし、これらの化合物群を人工的に、かつ持続可能な方法で合成することは非常に難しいのが現状である。その理由は、カルバゾールが多くの置換基(化合物に付く別の原子団)を持ち複雑な構造であるからだ。特に、1つの炭素に4つの異なる置換基が結合した「四置換炭素」という構造は、化学合成を行う上で大きな障害となっている。そのため、カルバゾールの効率的な合成方法の開発と同時に、使用する資源を再利用できる技術の確立が求められていた。
■研究の成果:
同研究では、ホルミウム(元素記号:Ho) 注3)などのランタノイド元素を用いた触媒を開発することで、四置換炭素を持つ複雑なカルバゾール化合物の合成に成功した。各種ランタノイド触媒の中でも、特にホルミウム触媒が効率と純度の両面で最も優れた結果を示した。
この成功の鍵は、「ディールス・アルダー反応」注4)と呼ばれる化学反応の巧みな利用にある。この反応は、2つの単純な構造の原料を結合させて複雑なカルバゾールを1工程で作ることができるだけでなく、四置換炭素も同時に作ることができるため優れている(図1)。しかし、研究グループが保有する既存のランタノイド触媒では四置換炭素を作るディールス・アルダー反応が進行しなかった。なぜなら、反応に使う原料の1つに、反応を妨げる立体的な障害があったからである。研究グループは、このジレンマを解決するために触媒の構造を工夫した。具体的には、ホルミウムの周りにスペースを作ることで立体的な障害を克服した。この工夫は、ホルミウムの触媒機能を高める一石二鳥の効果をもたらし、これまで反応が進まなかった原料同士を効率よく結合させることに成功した(図2)。
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