世界初、中性子線照射による藻類の品種改良技術を確立 ~バイオ燃料原料の油脂生成量を最大1.3倍に増加させることに成功~
Digital PR Platform / 2024年7月4日 15時10分
2.技術のポイントと実験概要
①中性子線照射条件の最適化
中性子線の種類(高エネルギー中性子線もしくは熱中性子線)とその吸収線量*10と、藻類の遺伝子の変異導入効率の関係性を初めて明らかにしました。
変異導入の判定は、単細胞性の藻類Cyanidioschyzon merolae*11(シゾン)を使用し、核酸を合成する遺伝子内に変異が導入されると、増殖を阻害する薬剤を含む寒天培地上での生育が可能となる仕組に基づいて行われました。解析の結果、高エネルギー中性子線の場合は20 Gy*12照射した際、熱中性子線の場合は13 Gy照射した際に最も効果的に変異が導入されることが明らかになりました(図2)。
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2341/91049/600_309_202407031649486685029cd6abe.JPG
②最適化された照射条件で引き起こされる変異パターンの解明
次に、最適化された照射条件で引き起こされた、変異パターンの解析を行いました。その結果、変異が導入された遺伝子の変異パターンは、1塩基配列*13の置換・欠失・挿入が全体の約9割を占め、2塩基配列以上の変化は約1割でした(図3)。放射線の一種であるガンマ線(γ線)の照射では、2塩基配列以上の変化が約3割であるという報告*14があり、中性子線照射が引き起こす変異パターンが、現行の手法とは異なることが示唆されました。
[画像3]https://digitalpr.jp/simg/2341/91049/500_342_202407031649486685029cd5b2a.JPG
③油脂生成量が向上した藻類の単離
最適な中性子照射条件をEuglena gracilis*15(ユーグレナ)に適用し、野生株に比べて最大1.3倍の油脂生成量を示す株の品種改良に成功しました。
シゾンで確認した最適な中性子照射条件を、バイオ燃料(ジェット燃料、軽油燃料相当)の原料となる油脂を生産する実用株の一つである、ユーグレナへ適用し、油脂生成量が向上した細胞の取得を試みました。中性子線を照射した細胞に油脂を特異的に染色する蛍光色素を加え、各細胞が発する蛍光量の強さを指標に選抜を行いました。その結果、野生株に比べて1.2倍から1.3倍の油脂生成量が高い4株*16の取得に成功しました(図4)。
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