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世界で初めてトポロジーの原理を利用したギガヘルツ超音波回路を実現 ~無線通信用高周波フィルタの小型・高性能化に向けた要素技術を実現~

Digital PR Platform / 2024年7月16日 15時8分

③トポロジカルリングとエッジ導波路の融合
 リングはループ状に閉じた導波路から成り、別の導波路から入射した波は、リング内での周回を通して、特定の周波数や波長の成分のみが強め合って出力されます。このリング中の波と導波路の波が干渉し特定の周波数の波の伝搬が抑制されるため、この複合構造はフィルタとして利用できます。ギガヘルツ超音波の場合、湾曲した導波路の側壁から生じる反射を避けるため、従来は半径が100マイクロメートル以上の大きな(曲率の小さな)リング構造が必要でした。これに対して、トポロジカル構造を導入することにより、曲率の大きな構造でも反射の影響が抑えられ、半径10マイクロメートル程度の微小な超音波リングが実現できます。

4.各機関の役割


NTT

 ガリウムヒ素などの化合物半導体に微細加工を施し、フォノニック結晶と呼ばれる人工音響構造を作製しました。そして、その内部を超音波がどのように流れるのかを、照射したレーザの反射光の変化を計測することで調べました。合わせて、有限要素法を用いてシミュレーションすることによりその伝搬特性を数値的に評価しました。


岡山大学

 トポロジーを用いた超音波制御において、波の伝搬特性を、人工音響構造(フォノニック結晶)を用いて設計しています。岡山大学では、様々なスケールのフォノニック結晶の設計ノウハウを蓄積し、数ヘルツ (Hz) ~数テラヘルツ (THz) の広範囲のバンド分散とトポロジカル秩序の探索・設計を行ってきました。(参考 DOI:10.35848/1347-4065/acc6da)

5.今後の展開
 今回の実験でギガヘルツ超音波を空間的に制御するための要素技術を確立しました。今後は、磁性体を導入し、外部磁場で超音波を動的に制御できる技術の確立をめざします。ギガヘルツ超音波の空間的かつ高速な制御が可能になれば、フィルタだけでなく、周波数変換器や増幅器などの無線通信端末に必要な高周波アナログ演算処理を、超音波を用いて同一チップ上で処理することが可能となります。これにより、既存システムであった超音波フィルタと電子部品間の圧電変換や基板接続が不要となり、アンテナ部のさらなる小型化や省エネルギー化につながることが期待されます。


【用語解説】
※1.トポロジー: 物体の形状や空間の性質を研究する数学の一分野です。物体を曲げたり伸ばしたりする「連続的な変形」をしても変わらない性質に注目します。つまり、トポロジーでは、物体の形でなく、どのように繋がっているかを重視します。例えば、ドーナツとコーヒーカップは同じものみなされます。これらは形が違いますが、繋がり方は同じなので、連続的な変形をするとドーナツからコーヒーカップ、又は、その逆も作ることができるからです。

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