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光線力学療法用の光増感剤を新たに開発

Digital PR Platform / 2024年7月22日 10時0分

光線力学療法用の光増感剤を新たに開発

~腫瘍血管の正常化への応用に期待~


 横浜市立大学理学部 服部伸吾助教、荻島瑞希さん(2023年度博士前期課程修了)、中島忠章助教、野々瀬真司准教授、佐藤友美教授、篠﨑一英教授らの研究グループは、北海道大学大学院工学研究院 細谷祥太さん(博士後期課程1年)、北川裕一准教授、長谷川靖哉教授と共同で、光線力学療法用光増感剤*1として両親媒性白金錯体を新たに開発し、ヒト臍帯静脈上皮細胞に対する選択的光細胞毒性や細胞内動態を明らかにしました。
 本研究成果は、アメリカ化学会国際学術誌「Inorganic Chemistry」に掲載されました(2024年7月12日)。

研究成果のポイント 


光線力学療法用光増感剤として両親媒性白金錯体を新たに開発した。
ヒト臍帯静脈上皮細胞に対してのみ白金錯体の光細胞毒性が確認された。
細胞内動態が白金錯体へのタンパク質の導入により変化することを発見した。




[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/91977/600_375_20240719171122669a1faa2d748.jpg


図1  白金錯体の光照射なし(白色)、および光照射あり(灰色)のヒト臍帯静脈上皮細胞生存率。

研究背景
 光線力学療法(PDT)は、光照射によって腫瘍組織を選択的に死滅させることができる非侵襲性のがん治療法の一つです。PDT用光増感剤としては、光誘起電子移動反応によってスーパーオキシドアニオンラジカルを生成させるType Iと、光誘起エネルギー移動反応によって一重項酸素*2を生成させるTypeⅡがあります。白金錯体は重原子効果により励起三重項状態を効率よく生成することができるため、TypeⅡの光増感剤としてこれまで注目されてきました。水に不溶な中性白金錯体を生体へ応用するためには、細胞への取り込みを改善するために両親媒性を得ることが重要になります。これまで、エチレングリコール基やペプチド基の導入した両親媒性の白金錯体が複数報告されてきましたが、これらは多段階の化学合成を必要とするため、より簡便な方法での両親媒性の獲得が望まれていました。

研究内容
 本研究では、白金錯体のイオン化、タンパク質内包による両親媒性の獲得に注目し、それらの合成、光物性解明、光細胞毒性試験を行いました。イオン化型白金錯体の一重項酸素生成量子収率は55%と高い値を示したのに対し、タンパク質内包型白金錯体は13%であることが分かりました。白金錯体で処理したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)では、イオン化型白金錯体は拡散による急速な取り込み後に細胞全体に非局在化した一方、タンパク質内包型白金錯体はエンドサイトーシス*3によって取り込まれ、細胞小器官と細胞膜に局在化することが示唆され、細胞動態が二つで異なることが明らかとなりました。イオン化型白金錯体はヒト臍帯静脈内皮細胞に対して高い光細胞毒性を示す一方、ヒト乳腺上皮細胞株(MCF10A)、ヒト乳癌細胞株(MDA-MB-231)に対しては光細胞毒性を示さないことが明らかとなりました。

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