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【名古屋大学】価格設定のしくみを解明 ~店舗の多い企業ほど「値上げしても客が逃げない」理由~

Digital PR Platform / 2024年7月19日 20時5分

街中でタクシーを拾う際、その街でいつも見かけるタクシーの初乗り運賃が実は他社よりもやや高く設定されている、という経験はないでしょうか。自動販売機の価格設定も、最大手の清涼飲料の方が強気の価格設定になっているように思えませんか?このように、ほとんど同じような商品やサービスであっても異なる価格が設定されている例が私達の身の回りには多数ありますが、伝統的な経済学では「一物一価の法則」と呼ばれる力学に支配されているため、競争圧力によってタクシー運賃は均一になってしまい、市場支配力を持つ企業を分析することができないのです。

市場支配力と企業規模の関係を分析するため、本研究グループは、「サーチ理論(注1)」と呼ばれる分析の枠組みを用いた新しい数理モデルを開発しました。伝統的な経済理論では、暗黙のうちに消費者は瞬時に全ての企業の価格を目の前で比べて最安値で取引機会を得られる、としていたところを、本研究グループは、取引のチャンスは確率的にしかやってこないという設定に変更することで、企業規模によって異なる価格設定を行う企業が共存できる環境を作り出すことに成功しました。

開発した数理モデルの性質を調べた結果、同一商品であっても店舗数の多い企業ほど高い価格を設定できる、ということを証明し定理としてまとめました。最大手企業は消費者にとって「目立つ」存在です。仮に最大手のタクシーを1台やり過ごして「すこし安い他社のタクシー」をあてにして待っていたとしても、結局次々やってくるのは最大手のタクシーばかりというのはよくあることです。この事実が消費者を「待っても無駄」という状態にさせることで、最大手企業は安心して価格を引き上げることができるのです。このような結果を踏まえると、企業が特定の地域に集中的に店舗を増やすのは、単に物流の効率化だけが目的ではなさそうだ、と考えるべきでしょう。


【成果の意義】
本成果は寡占的市場における価格設定に重要な示唆を与えるものであり、競争政策を立案する上での指針となるだけでなく、世界で進む物価上昇を産業レベルで解明することにつながることが期待されます。
本研究は、2020年度から始まった科学研究費基盤研究(B)『市場支配力とマクロ経済:サーチ理論による産業組織、景気変動と格差の分析』(20H01476)の支援のもとで行われたものです。


【画像説明】
図1 本研究チームが開発した数理モデルを「規模の異なる2企業」という設定でシミュレーションした結果をグラフにしたもの。横軸は最大手企業の相対的な規模を表す。0.5 の時にはライバル企業と同じ規模なので価格は両者で同一となるが、1に近づくにつれて最大手企業の価格p1 がライバル企業の価格p2 よりも高くなっていくことがわかる。

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