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【名古屋大学】価格設定のしくみを解明 ~店舗の多い企業ほど「値上げしても客が逃げない」理由~

Digital PR Platform / 2024年7月19日 20時5分

図2 本研究チームが開発した数理モデルを「最大手企業1社と無数の零細企業」という設定でシミュレーションした結果をグラフにまとめたもの。左上図と図1を比較すると、最大手企業の規模が拡大するにつれて、最大手だけでなく零細企業の価格も上昇していることがわかる。実は、零細企業の場合、大企業の市場支配力に「タダ乗り」して自社の価格を引き上げることが可能であることが判明した。タダ乗りの結果、大企業よりも高い利益を得ることに成功している(右上図の点線が零細企業の利益)。しかしながら、最大手企業の規模拡大に従って取引の総量が減少(左下図)し、消費者が得る社会厚生も減少(右下図)してしまう。

図3 本研究チームが開発した数理モデルを「ランダムに生成した企業数と規模分布」の設定で1万回のシミュレーションを行った結果をまとめたもの。実務で市場の競争度を測るハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)(注2)を横軸にとって、他の指標との関係をシミュレーションにより明らかにした。左上図では、実務上利用されているハーフィンダール・ハーシュマン指数がモデル上の経済における社会厚生の代理変数として機能していることが明らかになった。左下図はハーフィンダール・ハーシュマン指数が上昇して独占度が上がるにつれて市場での平均価格が上昇していることが分かる。右下図の縦軸は価格のちらばりを表す。HHI = 1の時は1社による独占なので価格の分散はゼロになる。HHI = 5000は対称な2企業による複占となるため価格が同じになるためやはり分散ゼロである。左上図と比べると、価格の散らばり具合と経済厚生に明確な関係は認められない。

【用語解説】
注1)サーチ理論:
相応しい取引相手や望ましい取引条件は費用をかけて探索する必要があるという、経済取引における摩擦をモデル化した経済理論。就業・失業を論じる労働経済学、貨幣の機能を論じる貨幣経済学、消費者需要が摩擦に影響を受けると考え市場競争を論じる産業組織論など、経済学の多くの分野で用いられている。

注2)ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI): 
ある市場における競争度を測る指標で、0から10000までの値を取る。例えば、ある地域のビール販売が1社に独占されている場合、100%を2乗した10000がHHIの値となる。逆に、文字通り無数の企業がビールを提供しているならば、各社の市場シェアが0になるため、HHIも0になる。シェアが同じ2企業いる場合は、HHI=50の2乗+50の2乗=5000となる。

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