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肥満によって透析治療が必要になりやすい腎臓の特徴を明らかに

Digital PR Platform / 2024年7月24日 10時21分

ネフロンは、腎臓の濾過機能を担う1ユニットです。腎臓ひとつ当たりのネフロンの数は、約60万から120万個と個体差が大きいうえに、加齢・高血圧・腎疾患などによってさらに減少し、慢性腎臓病の進展に深く関与しています。腎機能は、ネフロン数と単一ネフロン糸球体濾過量との積和で決定されるため、様々な原因によるネフロン数の減少に伴って、単一ネフロン糸球体濾過量が増加することで腎機能を代償すると考えられています。一方、この単一ネフロン糸球体濾過量増加は糸球体への負荷となり、糸球体障害やネフロン数減少によって、さらに単一ネフロン糸球体濾過量増加を招く悪循環が形成されます。これは「糸球体過剰濾過仮説」と呼ばれ、慢性腎臓病の進展過程に共通する背景理論として広く受け入れられています。

これまでに我々の研究グループでは、腎疾患症例においてネフロン(糸球体)数を推算する方法を確立し、この手法により早期の肥満関連糸球体症では糸球体過剰濾過が存在し、腎機能障害に関与することを示しました。しかしながら、発症早期の段階ではネフロン数の減少は認めず、なぜ一部の肥満者でのみ肥満関連糸球体症が発生するのかについて、根本的な原因は解明できませんでした。

このような研究経緯もあり、糸球体を構成する重要な細胞であるポドサイトに着目をしました。ポドサイトは、糸球体毛細血管を外側から束ねる上皮細胞で、腎臓の正常な濾過機能を維持するために不可欠とされます。一方、ポドサイトの脱落と減少は、持続性蛋白尿と糸球体硬化の原因となり、腎臓全体の不可逆な荒廃化への過程として進行性腎疾患に共通する過程と考えられています。しかし、糸球体毛細血管を覆うポドサイトは、複雑に入り組んだ構造をしているために、ポドサイトの数を正確かつ簡便に測定することは困難でした。我々は、腎組織一切片からポドサイトの数や大きさを計測する独自の方法を新たに確立することに成功しました。今回の研究でも、この方法を用いて肥満関連糸球体症例のポドサイトの数と大きさを計測しました。


その結果、
1) 腎機能が保持された早期の肥満関連糸球体症例では、肥満合併腎移植ドナー例と比較して、ネフロン数は同程度でしたが、糸球体あたりのポドサイト数と糸球体容積あたりのポドサイト数(ポドサイト密度)は既に少なくなっていました。
2) 肥満関連糸球体症例の中でも、腎生検時のポドサイト密度が低いほど、その後の腎機能低下が早く、腎予後が不良でした。一方で、ポドサイト数と腎予後との関連は認めませんでした。
3) 単一ネフロン糸球体濾過量は、ポドサイト密度と負の相関を認めましたが、ポドサイト数とは関連しませんでした。

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