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窒素原子置換によるわずかな差で空間と水素・電子輸送物性を精密コントロール

Digital PR Platform / 2024年8月9日 14時0分


[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1706/92807/550_229_2024080213490666ac6542ae332.jpg


図3. ジアザピレンCOFにおけるプロトン伝導。(a) 模式図と温度可変プロトン伝導特性。(b) 窒素(図中の青色の丸)酸素における水分子の吸着モード。窒素に補足された水素イオン(プロトン、図中ではH+と書かれた水色の丸)に水分子中の酸素(図中の赤い丸)が吸着するために、湿潤環境では高いプロトン伝導性を示す。

3.波及効果、今後の予定
 本研究では、ジアザピレンというごく最近開発された新規機能性分子骨格をCOFに用いることで、精密に機能化されたCOFが物性に与えるインパクトを明示しました。特に、ベンゼン環の二面角を小さくし、平面性と結晶性を高めたCOFが伝導に有利であることは一般性の高い知見であり、分子設計の重要性を示しています。また、ジアザピレンの窒素上においてプロトンをトラップすることでプロトン伝導特性を高められることがわかり、COFを用いた低温プロトン伝導やプロトン輸送スイッチへの応用の可能性が拓けました。今後は、機能性分子の選択と伝導条件の精査によって、COFのもつ可能性をさらに引き出していきたいと考えています。

4.研究プロジェクトについて
 本研究は以下の支援を受けて行われました。
・日本学術振興会 科学研究費補助金(22H00314, 20H05867, 20H05862, 20H05837, 20H05840, 18J23477)
・日本学術振興会 海外研究員奨励費(22F32045)
・科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 CREST「Giant CISS物質:界面陽電子・電子の全運動量制御」(JPMJCR23O3)
・文部科学省 学術変革領域研究(A)「高密度共役の科学」(21H05480)
・“Program for Promoting Researches on the Supercomputer Fugaku”(JPMXP1020230318)
・Research Center for Computational Science, Okazaki, Japan.

<用語解説>
1. COF:Covalent Organic Framework(共有結合性有機構造体)。多くの場合、炭素―窒素やホウ素―酸素などの可逆的結合形成反応を数箇所並行して行うことで、構造欠陥を修復しながら周期的細孔構造を得る合成法が用いられる。
2. π電子系化合物:単結合と二重結合などの多重結合を交互に有する分子。電子が1つの原子に局在せずに化合物内で共役されている。光の吸収や電子の授受などの性質がその構造に依存する。
3. バンドギャップ:電子が詰まっているバンド(価電子帯)の上端と電子が詰まっていない空バンド(伝導帯)の下端のエネルギー差。
4. ピレン:組成式C16H10で表される多環芳香族炭化水素。外周部の炭素の位置番号が定義されており、1,3,6,8位と呼ばれる場所は反応に用いやすく、フェニル基(ベンゼン環)を付けてCOF合成のユニットとして利用される。
5. ジアザピレン:ピレンの炭素原子のうち2箇所が窒素原子によって置換されたもの。本研究では2位と7位の炭素が窒素に置換され、炭素上にあった水素原子(C-H)がなくなっているために1,3,6,8位のフェニル基の二面角が小さくなっている。
6. Slipped AA stack:COFの水平方向の座標がわずかに滑りながらコアとコア、リンカーとリンカーが相互作用することで三次元化する積層様式。
7. 時間分解マイクロ波伝導度測定:サンプルを設置した共振器へのマイクロ波の照射により非破壊・非接触で速やかに材料の電気伝導度を評価する測定手法。
8. 電気化学インピーダンススペクトル測定:サンプルに交流信号(電圧もしくは電流)を印加し、電圧と電流を同時に測定することによって得られた信号の比(電流/電圧)からインピーダンス(交流回路における電流の流れにくさを示す値)を求める測定法。

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