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ワニはどうして長時間水に潜れるのか?

Digital PR Platform / 2024年8月7日 14時54分

研究内容
 研究グループは、North Texas大学にて生態学の実験目的で飼育されているワニ (Alligator mississippiensis) から採取された血液からヘモグロビンを精製して、クライオ電子顕微鏡による構造解析を行いました。それにより、酸素が結合した状態、一酸化炭素 (CO) が結合した状態(図1a)、および酸素が解離した状態(デオキシ状態)(図1b)の3種類の状態の立体構造を明らかにすることに成功しました。デオキシ状態のヘモグロビン試料は、大阪大学栗栖研究室に設置された嫌気チャンバー内の低酸素環境下で調製しました。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/92954/500_267_2024080612212666b196b695d47.jpg


図1 a) 一酸化炭素 (CO) が結合した状態のR型構造をとったワニのヘモグロビンの電顕マップ。b) デオキシ状態のT型構造をとったワニのヘモグロビンの電顕マップ。α1サブユニットをピンク色、β1サブユニットを水色、α2サブユニットを黄緑色、β2サブユニットをオレンジ色、ヘムを黄色で表示している。

・重炭酸イオンとの結合様式
 2.2オングストローム(Å、1Åは100億分の1メートル)の高分解能で決定した、T型構造をとったデオキシ状態のワニのヘモグロビンの立体構造から、ヘモグロビン4量体のαサブユニット、βサブユニットの界面に合計2分子の重炭酸イオンが結合することが明らかになりました(図2a)。その結合部位は、他の脊椎動物のヘモグロビンにおける有機リン酸の結合部位とは異なっており、ワニのヘモグロビンが独自に獲得したものであることがわかりました。重炭酸イオンは合計8つのアミノ酸によって認識されており(図2b、c)、ヒトを含む他の動物のヘモグロビンと比較すると、ワニでは特に2つのアミノ酸置換(βサブユニットの38番目のスレオニン*3と、41番目のフェニルアラニン*4)が重炭酸イオンによる作用を獲得するために重要であることが明らかになりました(図2d)。


[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/92954/500_302_2024080612215266b196d07adf3.jpg


図2 a) 重炭酸イオン(黄色)が結合したT型構造のワニのヘモグロビンの立体構造。b) 重炭酸イオンの電顕マップの密度。c) 重炭酸イオンとT型構造のワニのヘモグロビンのβ1サブユニット(水色)との結合様式。d) ワニのヘモグロビン(水色)とヒトのヘモグロビン(オレンジ色)における重炭酸イオン結合部位の比較。

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