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ワニはどうして長時間水に潜れるのか?

Digital PR Platform / 2024年8月7日 14時54分

今後の展開
 この研究の起源は、実に40年以上前にさかのぼります。1977年に初めてワニのヘモグロビンの重炭酸イオン作用が報告されて以降、イギリス分子生物学研究所のMax Perutz博士や長井潔博士らによって、その仕組みが議論されてきましたが、立体構造は長い間明らかになっていませんでした。本研究は、これらの長い研究の末に実を結んだ成果であると言えます。
 本研究により、ワニが進化の過程で独自に獲得した重炭酸イオン作用の仕組みが明らかになったことで、脊椎動物のヘモグロビン分子進化における新たな知見を提供できる可能性が期待されます。また、今後、鎌状赤血球症等で心肺機能の弱い患者に対する遺伝子治療や輸血用人工血液といった医療への応用も期待されます。
 本論文の責任著者であるテイム教授(横浜市立大学大学院生命医科学研究科)をはじめ、複数の研究者の指導者でもあった故長井博士に特別の感謝を示したいと思います。

研究費
 本研究は、文部科学省科学研究費助成事業(JP23H02439, JP24H02264[西澤])、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2179[高橋])、AMED研究事業(JP23ama121001)の支援を受けて行われました。

論文情報
論文タイトル:The unique allosteric property of crocodilian haemoglobin elucidated by cryo-EM.
著者:Takahashi K, Lee Y, Fago A, Bautista NM, Storz JF, Kawamoto A, Kurisu G, Nishizawa T*, Tame JRH. * (*correspondence)
掲載雑誌:Nature Communications
DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-024-49947-x

用語説明
*1 アロステリック制御:ヘモグロビンの一つのサブユニットに酸素が結合すると、連鎖的に4量体の他のサブユニットにも構造変化が伝わり、酸素に対する親和性が向上する仕組み。この仕組みによって、ヘモグロビンにおける酸素結合・解離は協同的に起こることが知られている。
*2 クライオ電子顕微鏡単粒子解析 : クライオ電子顕微鏡と呼ばれる装置を用いて、約-180℃の低温環境下でタンパク質などの試料に電子線を照射して撮影し、得られた粒子像から三次元構造情報を再構成して、分子の立体構造を解析する手法。
*3 スレオニン(ヒトではリジン) : 20種類ある天然アミノ酸のうち、スレオニン、リジンはいずれも親水的ではあるが、スレオニンに対してリジンは側鎖が長く、先端にアミド基に由来する正電荷をもつ。ワニのヘモグロビンでは、リジンの正電荷が重炭酸イオンの負電荷とイオン結合を形成する。
*4 フェニルアラニン(ヒトではチロシン) : 20種類ある天然アミノ酸のうち、チロシンとフェニルアラニンはいずれもベンゼン環構造を側鎖にもつが、チロシンは側鎖の先端に水酸基が付加されている。ワニのヘモグロビンでは、チロシンの水酸基が重炭酸イオンと水素結合を形成する。

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