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半世紀来の謎だったセファロスポリン系抗菌薬が薬によって多様な血漿タンパク結合率を示す理由を原子レベルで解明

Digital PR Platform / 2024年8月6日 12時37分

[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2299/92980/600_301_2024080612215966b196d732b11.jpg


図1セファロスポリン系抗菌薬の構造と血液内でのイメージ


<研究手法・研究成果>
研究グループはまず血漿タンパク結合率の高いセファロスポリンがHSAのどの場所に結合するのかを調べるために、HSAとセフトリアキソン及びセファゾリン(血漿タンパク結合率:80%)の共結晶を調製し、茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設Photon Factory BL-17Aビームラインを利用してX線結晶構造解析法による立体構造の決定を行いました(図2)。その結果、セフトリアキソン及びセファゾリンは共にHSAのサブドメインIBに存在するトンネル状の窪み1ヶ所に結合していることがわかりました(図2及び図3)。次にX線結晶構造解析で観察された結合部位が溶液中でも同じであることを確認するため、薬剤感受性試験とHSA結合競合実験を実施しました。HSAを添加した培地でセフトリアキソンの薬剤感受性試験を実施すると最小発育阻止濃度(MIC)が上昇することが知られていましたが、HSAサブドメインIBに結合することが知られている薬(ビカルタミド)を培地に追加するとその量依存的にMICの上昇が軽減されました。また、セフトリアキソンのHSAに対する結合定数もビカルタミドの量依存的に低下したことから、溶液中でもセフトリアキソンはHSAのサブドメインIBに結合していることが確認できました。そこで立体構造に戻り、セフトリアキソン及びセファゾリンとHSAの相互作用の詳細を観察すると、共通して窪みの中心にあるArg117残基の側鎖とセフェムコアの4位のカルボキシル基及び8位のカルボニル基が水素結合を形成し、セファロスポリンのR1及びR2側鎖はトンネルを貫通するように窪みに収まっている様子が観察されました(図3上)。さらにこれらの構造を重ねて比較すると、セフトリアキソンが結合したHSAの構造ではTyr161残基の配向が異なり、R2側鎖を収納している部位が局所的に狭くなっていることがわかりました(図3下)。また、この構造変化はセフトリアキソンのR1側鎖が分岐した嵩高い構造をしていることが原因で、両者の立体障害を解消するために起ったものと推測されました。これに注目して、他のセファロスポリン系抗菌薬の化学構造を観察してみると、R1側鎖の構造はセフトリアキソンと同様に分岐した嵩高い構造を有している薬が多いことがわかりました。また、セフェムコアからR2側鎖が結合している部分に注目すると、血漿タンパク結合率が高い薬はセフェムコアとR2側鎖を繋ぐリンカーが2原子で構成されているのに対し、血漿タンパク結合率が低い薬はリンカーが1原子と短いことがわかりました(図1)。加えて、R2側鎖が無い、またはメチル基や塩素原子のような小さなものは中間の血漿タンパク結合率を示していたことから、血漿タンパク結合率が高いセファロスポリン系抗菌薬はTyr161の回転による狭窄部分を回避してR2側鎖が収まるポケットと相互作用できる構造を有している薬で、続いてR2側鎖が小さい薬、R2側鎖が狭窄部分とぶつかる構造を有する薬の順に血漿タンパク結合率が低下していることがわかりました。

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