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量子コンピュータのシミュレーション性能を劇的に向上させる「蒸留」限界を突破! - 物理現象の局所化による情報の遮断を活用 -

Digital PR Platform / 2024年8月23日 0時0分



[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2341/93594/350_365_2024082111301566c551373eba2.JPG



2.研究の背景
 量子力学は自然現象を記述する最も基本的な理論であり、現代物理学の基盤としての役割だけでなく、半導体デバイス設計のような現代エレクトロニクスの基礎としても重要な役割を担っています。量子力学に従う複雑な現象は、従来のコンピュータではシミュレーションが困難であると知られており、複雑な現象を理解し制御することのボトルネックになっています。
 そのような自然現象を効率的に調べるために有効な手段と考えられているのが、量子力学に従って動作するデバイスの活用、すなわち量子シミュレーションです。量子シミュレーションは、リチャード・P・ファインマン※5による量子コンピュータの提案の起源であるだけでなく、現在の量子情報科学において中心的なトピックであり、物性物理学、統計物理学、量子化学、高エネルギー物理学など、複雑な量子力学的現象が現れる多くの分野への応用が期待されています。
 例えば、熱平衡状態・非平衡ダイナミクス※6のシミュレーションにおいては、量子力学的な効果が大きく現れる場合、従来のコンピュータでは非常に困難と考えられており、量子シミュレーションの応用が威力を発揮すると注目されています。しかし、これまでの量子デバイスには、実験的な制約があるためすべてのタスクを量子デバイス上で行うことが難しいという問題がありました。実験的な制約とは、たとえば冷却温度の限界や環境からのノイズの影響のことを指します。この問題に対処するために、もつれ測定を利用した、量子状態の純度※7を仮想的に高める方法である仮想冷却法・仮想蒸留法※8が先行研究で提案されました。しかし、扱う問題のサイズが大きくなるにつれて測定回数が指数関数的に増大し、量子シミュレーションが威力を発揮するはずの大規模なサイズの問題に対処できなくなってしまうという困難を抱えていました。

3. 研究の内容
 本研究グループは、局所性という物理学の基本概念を考察し、量子シミュレーションに必要なもつれ測定を全域ではなく、着目する局所領域に限定する新しい手法「局所仮想純化法」を提案しました(図1)。熱平衡状態のように自然界にて普遍的に実現される状態では、局所性に密接に関連した概念である「クラスター性」と呼ばれる性質が広く成り立つと信じられています。クラスター性とは、遠く離れた2地点間での実験結果は相関を持たない、という性質のことです。量子シミュレーションにより生成される状態がこのような性質を持っていれば、遠く離れた地点において蒸留により純度を高める操作は、出力結果に何の影響も及ぼさないことになります。言い換えると、着目する領域から遠く離れた地点の純度を高める操作は不要であり、全域的ではなく局所的にのみ蒸留することで、従来の測定回数の指数関数的な増大の問題を解決できると期待できます。今回の研究では、上記の期待が現実となるような理論的な条件を明らかにしました。具体的には、冷却やノイズ緩和タスクに局所仮想純粋化法が適用できるための条件、つまり局所的に制限された蒸留操作が数学的に正当化される条件を示しました。加えて、条件が完全に満たされない場合であっても、局所的な操作への置き換えが依然として有効であることを数値的に示しました(図2)。さらに、先行研究で独立に提唱された冷却とノイズ緩和タスクを同時に実行可能であることも提案し、このタスクを全域的ではなく局所的なものに置き換えることができることも数値的に示しました(図3)。

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