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【東京医科大学】超音波画像マーカーによる肝臓の炎症、脂肪化、線維化の評価を確立 ~超音波画像マーカーにより低侵襲な肝病態評価が可能~

Digital PR Platform / 2024年8月21日 14時5分

【研究の背景】
 慢性肝疾患の原因として近年C型肝炎患者の急速な減少と相前後して脂肪性肝疾患(steatotic liver disease: SLD)が臨床現場で急速に増加しています。SLDの中でも特に非飲酒者でのMASLDはこれまでNAFLDと呼称されてきた非アルコール性脂肪性肝疾患に代謝異常を加味した疾患名で本邦において非常に多い疾患です。しかし、その評価法や治療のモニタリングに関しては、いまだ侵襲的な肝生検が必要であり、実臨床で簡単に使える非侵襲的な評価法が求められています。近年、肝臓の線維化に関しては組織の硬さを映像化する超音波エラストグラフィの登場・普及で臨床現場は大きく変わってきています。また、肝臓の蓄積脂肪の評価も超音波で簡便かつ正確に行えるようになってきています。しかし、肝組織内の炎症の程度を評価する確立した画像技術はいまだありません。

【本研究で得られた結果・知見】
 脂質や糖質を摂りすぎると、まずは単純性脂肪肝が生じます。この段階では肝臓内に脂肪沈着を認めますが、炎症所見は認めません。脂肪化の有無の評価にはAttenuation coefficient(AC)が有用です。その後、脂肪沈着がさらに続くと肝臓に炎症を生じMASH(Metabolic-dysfunction Associated Steatohepatitis)へ進展します。この段階では肝線維化は乏しく、この段階で適切に介入すれば大事には至りません。この評価にはDispersion slope(DS)が有用です。この段階を放置すると、肝内に線維化が進展しAt risk MASHになります。At risk MASHでは心血管イベントや肝がんのリスクが高まり、臨床的に重要な病態です。この評価にはShear wave speed(SWS)が有用です。このようにこれら3つの超音波マーカーを使用することで、脂肪肝の病態評価を適切に行うことが可能です(図1、2)。

【今後の研究展開および波及効果】
 DSは肝臓の炎症を反映する画像マーカーですが、それ以外にも肝臓の線維化やBMI(Body Mass Index)と呼ばれる体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数にも影響を受けることが今回の研究で分かりました。今後は肝臓の線維化が進んだ患者やBMIが高値の患者でもDSが精度よく測定できるような装置の改良が期待されます。また、DSの有用性はMASLD/MASH患者において報告がありますが、その他の肝疾患(C型肝炎、B型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎等)での報告がほとんどなされていません。今後はこれらの肝疾患に対しても、DSの意義を評価していく必要性があります。現在DSを測定することができる超音波診断装置は、キヤノンメディカルシステムズ社ともう1社しかありません。今後、他の超音波機器メーカーが開発することで、この分野の研究がさらに発展していくと考えられます。

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