東京医科大学免疫学分野の横須賀忠主任教授ら研究チーム「免疫チェックポイント分子LAG-3による新たな免疫抑制メカニズムを発見」~ チェックポイント阻害剤抗LAG-3抗体によるがん免疫療法の理解に期待 ~
Digital PR Platform / 2024年8月27日 14時5分
【本研究で得られた結果・知見】
今回、T細胞上のLAG-3の動きを解析するため、LAG-3の1細胞分子イメージングの新たな実験系を確立しました。まず、LAG-3のリガンドであるMHCクラスII(MHC-II)を組み入れた「人工がん細胞脂質二重膜」を作成し、その上にLAG-3を発現しているT細胞をのせ、LAG-3の挙動を観察しました。T細胞は数分をかけて脂質二重膜に接着し、MHC-IIとの結合を機にLAG-3分子が数十個集まったクラスターが形成され、その後、LAG-3クラスターは真ん中に集まっていくのが観察されました(図3)。
LAG-3はMHC-IIとの結合を機に分子の集合体を形成しますが、MHC-IIと結合できないLAG-3(変異LAG-3)は分子の集合体を形成することができませんでした(図4、緑)。また、LAG-3の凝集はTCRの凝集と同じ位置に形成し、リガンドであるMHC-IIもLAG-3と結合することでT細胞の真ん中に集まってきました(図4上段、マゼンタ)。
TCR集合体が集まる中心部超分子クラスター(cSMAC)は様々なシグナルを誘導するだけでなく、TCRをT細胞の中に取り込みシグナルを終焉させる構造であることが知られています。そのため、LAG-3によってcSMACに集められたMHC-IIがT細胞に取り込まれるかを観察しました。その結果、予想した通り、TCRと結合したMHC-II、およびLAG-3と結合したMHC-IIはLAG-3に囲まれるようにT細胞の中で検出されました(図5A)。また、フローサイトメトリーを用いて定量的に解析した結果、LAG-3欠損T細胞、および変異LAG-3を発現したT細胞と比較して、LAG-3を発現したT細胞はMHC-IIを取り込んでいました(図5B)。さらに、LAG-3発現T細胞と抗原提示細胞を一緒に培養することで、抗原提示細胞上のMHC-IIの発現が低下していました(図5C)。このような他の細胞の表面に発現する分子を取り込む現象は"トランスエンドサイトーシス"と呼ばれており、LAG-3発現T細胞はトランスエンドサイトーシスによって抗原提示細胞上のMHC-IIを減少させることがわかりました。
図5でLAG-3発現T細胞が抗原提示細胞上のMHC-IIを減少させることがわかりました。MHC-IIはCD4 T細胞の活性化に必須の分子であることから、LAG-3発現T細胞によってMHC-IIが減少した抗原提示細胞がCD4 T細胞を活性化する能力を失っているかを評価しました。その結果、図5でMHC-IIの取り込みが起こらなかったLAG-3欠損、および変異LAG-3を発現したT細胞との培養ではCD4 T細胞は分裂しましたが、LAG-3発現T細胞との培養では、CD4 T細胞が分裂できなくなることが認められました(図6A)。個体の中でも同様にLAG-3発現T細胞がCD4 T細胞の活性化を抑制するかを評価するために、CD4 T細胞が病原性T細胞として働くことで発症する腸炎モデルで検証しました。その結果、LAG-3欠損T細胞を病原性T細胞と共にマウスに移入しても、体重減少に違いは認められませんでしたが、LAG-3発現T細胞と共に移入することで、体重減少が抑えられることがわかりました(図6B)。また、病変部位である大腸を組織学的に解析したところ、病原性CD4 T細胞のみ、もしくは病原性CD4 T細胞とLAG-3欠損T細胞を移入したマウスと比較して、LAG-3発現T細胞を共移入したマウスでは大腸に病原性CD4 T細胞(赤色)が少ないことがわかりました(図6C)。
本研究から、T細胞上のLAG-3はリガンドであるMHC-IIと結合することで、LAG-3集合体を形成し、MHC-IIをcSMACに集めることがわかりました。また、cSMACに集められたMHC-IIはTCRのT細胞への取り込みとともにT細胞に取り込まれ、抗原提示細胞上のMHC-IIの数を減少させます。それによって、抗原提示細胞はCD4 T細胞の活性化能が低下し、CD4 T細胞が活性化するための刺激を与えられなくなります(図7)。これまで、LAG-3を介した免疫抑制作用はLAG-3を発現しているT細胞に負のシグナルを誘導すると考えられていました。しかし、本研究結果から、LAG-3発現T細胞による抗原提示細胞上のMHC-IIを減少させるという間接的にCD4 T細胞の活性化を抑制機構が存在することが明らかとなりました。
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