腎機能障害は心不全患者の心臓突然死のリスクを予測できる
Digital PR Platform / 2024年8月30日 13時24分
藤田医科大学ばんたね病院 祖父江嘉洋准教授と渡邉英一教授らの研究グループは、心不全患者の心臓突然死(SCD; sudden cardiac death)に着目し多変量Cox比例ハザード解析※1を通して、予後予測因子の検討を行いました。この結果、これまでに明らかにされているNYHA(New York Heart Association)分類※2、左室収縮能(LVEF; left ventricular ejection fraction)に加え、eGFR※3(推定糸球体濾過量)が独立した予後予測因子ということを明らかにしました。これらの成果により、今後、心不全患者における突然死リスクの層別化がより正確になることが期待されます。
本研究成果は、欧州の学術ジャーナル「ESC Heart failure」(2024年6月11日号)で発表されました。
論文URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ehf2.14892
<研究成果のポイント>
突然死の発症時期は、心不全退院後3カ月以内が約1/4(23%)を占める
eGFRが独立したSCDの予測因子であることを明らかに
従来のNYHA分類・LVEFに加えeGFRを追加することで、突然死の予後予測を改善することを統計学的に有意であることを確認
SCDのリスク軽減のための治療方針をたてる、新たな指標になることが期待される
<背 景>
心不全患者における主な死因のひとつとして心臓突然死(SCD)があり、心不全患者の死因の9~22%を占めています。その原因は心室頻拍(VT)・心室細動(VF)が多く、ICDという心臓植込みデバイスはこれら不整脈を自動的に感知し、抗頻拍ペーシングや電気的除細動を行うことでSCDを回避することが可能です。ICDは1980年代より臨床応用され、心不全患者の生命予後を改善し、現在では確立された治療法になっています。
しかしICDが日常臨床に導入され、約40年が経過した現在でも、ICD植込み適応基準はこれまでの臨床研究を基にNYHA分類と左室収縮能の評価であるLVEFの2項目を中心に決定されています。しかしICD適応外の患者におけるSCDや、適応と判断されるもICD植込み後に致死的不整脈を認めず一度も作動することのない患者など、そのリスク層別化は十分にできていませんでした。また、これまでの研究から血液供給が損なわれている患者のSCDの発生率は22%と高く、心不全患者にICDを使用することの有効性を示すデータがある一方で、慢性腎臓病患者の重要な臨床集団は含まれていませんでした。そのため今回、心不全患者の突然死の発生頻度を評価するとともに、その予後予測因子を評価しました。
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