世界初!卵子にDNA溶液を注入することで人工細胞核の構築に成功 細胞核の機能獲得メカニズムの一端を明らかに
Digital PR Platform / 2024年9月13日 20時5分
(1)マウス卵子へのDNA注入法の確立
マウス卵子内でDNAから人工細胞核を作製するためには、卵子細胞質中にDNAを注入する必要があります。マウス卵子へのDNA注入法は、マイクロインジェクション技術を用いました(図1)。DNAはDNAビーズとしてではなく、DNA溶液として注入し、核様構造を形成するために必要なDNAの長さ・濃度・時間の条件を検討しました。その結果、少なくとも長さ48.5kbp(キロベースペア)※5 以上で、濃度100ng/µLであれば卵子内で拡散せず、本物の核に酷似した形態を持つ核様構造になることがわかりました。また、注入されたDNAの挙動はDNAの長さや濃度により異なることがわかりました。さらに、天然の核に酷似した核様構造を構築するためには、DNAを注入するタイミングが重要であり、卵子の細胞周期のうち、分裂終期を通過する条件に注入をすればよいことも明らかになりました。
※図1
(2)注入したDNA周囲へのヌクレオソーム構造の観察
核輸送を行う核タンパク質のなかに、ヌクレオソームに結合するRCC1があります。つまり、注入したDNAが核輸送能力を獲得するためには、注入DNA上にヒストンタンパク質が集積し、ヌクレオソームの構造を形成する必要があります。免疫染色法※6 により確認した結果、注入したDNA上にヒストンタンパク質の集積を確認しました。次に、ヌクレオソームを形成していることの指標となるタンパク質であるRCC1-EGFPについて、ライブセルイメージングを用いて確認しました。さらに、別のヌクレオソーム結合プローブであるJF646-LANAも用いて確認しました。その結果、注入したDNA上でそれぞれのタンパク質のシグナルを検出することができました(図2)。以上の結果から、マウス卵子内に注入したDNAは、ヌクレオソームを形成していることがわかりました。
※図2
(3)DNA周囲の核膜および核膜孔複合体構造の観察
核輸送は、核膜上に多数点在する核膜孔複合体と呼ばれる穴を通じて行われます。つまり、注入したDNAが核輸送能力を獲得するためには、核膜と核膜孔複合体を形成している必要があります。これらの構造の有無を確かめるために、まずは電子顕微鏡観察を行いました。その結果、注入したDNAの周囲に本物の核と酷似した核膜と核膜孔複合体が観察されました(図3a)。さらに、核膜孔複合体を構成するタンパク質や核膜タンパク質が存在するかを、免疫染色により確かめたところ、注入したDNAを取り囲むように、それらの存在が観察されました(図3b)。また、核膜孔複合体を構成するタンパク質をライブセルイメージングにより観察したところ、DNA注入直後は認められませんでしたが、時間経過とともに観察され、注入したDNAが核膜孔複合体を獲得する様子を世界で初めて捉えました(図3c)。
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