昭和大学の研究チームが、抗体薬物複合体による遷延する吐き気・嘔吐にオランザピンの有効性を報告
Digital PR Platform / 2024年9月17日 14時5分
昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の酒井瞳准教授(先端がん治療研究所)と鶴谷純司教授(同)らの研究チームは、抗精神病薬のオランザピンを用いることで、抗体薬物複合体トラスツズマブデルクステカンによる遷延する吐き気や嘔吐を予防できることを世界で初めて明らかにしました。
本研究成果は、欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)の学術集会(9月14日:スペイン・バルセロナ)で報告され、論文引用頻度の極めて高い科学誌「Annals of Oncology」に同時掲載されました。
抗体薬物複合体( Antibody-Drug Conjugate:ADC)は、抗体に抗がん剤を結合させることで腫瘍細胞により選択的に抗がん剤を届ける新しい治療薬です。結合する抗がん剤の種類や量によっては吐き気が長期間続く場合があります。
トラスツズマブデルクステカンは乳がん、胃がん、肺がんを中心に、さまざまな腫瘍に効果が認められているADCで、今後も処方を受ける患者数の増加が見込まれています。また、この薬剤による頻度の高い副作用に、遷延する吐き気、嘔吐があり、患者さんを悩ませます。副作用を予防することは、患者さんの生活の質を守るために極めて重要です。
従来の抗がん剤は点滴後一週間ほどで吐き気は改善することが多く、抗がん剤の点滴前後にステロイド、セロトニン拮抗薬、NK1受容体拮抗薬が予防に用いられてきました。トラスツズマブデルクステカンでもこれらの薬剤は一定の予防効果が期待できますが、1週間を超える吐き気には有効な予防薬は報告がありませんでした。
今回、昭和大学の研究グループの行った臨床試験には、トラスツズマブデルクステカンを受ける168人の乳がん患者さんが参加し、標準的で予防的な吐き気止めに加えて、オランザピンまたはプラセボのいずれかを点滴から連日6日間、夕食後に服用しました。オランザピンを服用した患者さんでは、服用期間のみならず1週間を超えて長期間に渡り遷延する吐き気予防の効果を実証しました。
オランザピンはうつ病や統合失調症の患者さんの症状を和らげる薬剤として臨床で広く用いられており、その安全性は確立しています。脳内に存在する複数の受容器に結合し、吐き気を遮断します。今後、既存の制吐剤との比較試験が確認のために必要と考えられますが、本研究はトラスツズマブデルクステカンの吐き気・嘔吐予防にオランザピンを用いることの科学的な裏付けを与える世界で初の研究結果です。
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