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飛べない鳥エミューの翼が短くなる新たなメカニズムを解明

Digital PR Platform / 2024年9月20日 11時14分


●背景
四肢の退縮は、鳥類も含めた四肢動物の進化の歴史の中で何度も起こっている。走行に特化した飛べない鳥であるエミューは、翼(前肢)が著しく退縮しており、四肢退縮の遺伝的メカニズムを知る上でのモデルとされる。これまでの研究では、翼の退縮に関係のある遺伝子などが同定されていたが、翼の骨格パターンの著しい個体間でのばらつきは説明できず、その形態形成のメカニズムには不明な点が多く残されていた。そこで今回の研究では、翼の骨格パターンのばらつきに着目した。

●研究成果
研究チームは、エミューの翼の骨格は短縮しているだけでなく、個体間でもばらつきがあり、同じ個体でも左右の骨格で長さやパターンに違いがある例が多いことを見いだした(図1)。このようなエミューの翼の特徴的な骨格パターンは、翼の先端に筋肉が作られないために、胚発生中に翼を動かせず、骨格形成に必要なメカノストレスが足りないことによることが示された。これにより、エミューの翼の骨は短くなり、左右非対称な融合を起こすと考えられた。
この筋形成不全の原因を調べるために、筋前駆細胞の性質と挙動を解析した。その結果、エミューの翼の原基(用語5)には、体節由来の筋前駆細胞と側板中胚葉細胞の二重のアイデンティティを持つ筋前駆細胞が存在し、これらの細胞が融合して筋繊維になるときに、細胞死を起こしていることが分かった(図2)。通常、四肢動物の手足の筋肉は、体節由来の筋前駆細胞という均質な細胞同士が融合し、筋繊維をつくることで形成される。エミューの翼は、二重のアイデンティティを持つ筋前駆細胞という異質な細胞が存在していることが原因で、融合した際に正常な筋繊維がつくれずに細胞死を起こし、筋形成不全を起こしたと考えられた。
これらのことから、エミューでは、原基に存在する特殊な筋前駆細胞が細胞死を起こすことで翼の筋形成不全が生じ、それによって胚発生中に翼の骨へのメカノストレスが不足するために、骨格パターンに影響が生じていたことが示された。


●社会的インパクト
この研究は、胚や胎児期の手足の運動が、すでに知られている骨格要素の伸長だけでなく、左右対称な骨格の伸長やパターン形成に重要であることを示している。さらに胚や胎児期に手足の運動量が変化するような状況は、エミューのような遺伝的要因によるものだけでなく、自然環境でも多く存在することから、本研究の成果は、胚や胎児期の運動といった環境要因に左右されうる条件が、形態進化や多様化に大きな影響を与えていることも示唆するものだと言える。

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