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光合成微生物シアノバクテリアの新規の環境ストレス順応応答の発見〜限りあるリン資源を有効活用する持続的な物質生産への応用に期待

Digital PR Platform / 2024年10月1日 14時5分




【研究内容と成果 1】
 論文1では,Synechocystisを用いた解析により,-P条件下,主要P化合物である核酸のうち,DNAではなくRNAが,そして特にrRNAが分解されること,逆に必須リン脂質のphosphatidylglycerol(PG)等,他のP化合物の量が増加することが見出されました(図1).
PGは光合成生物にとって必須の脂質です.-P条件下,PGの合成系遺伝子は発現誘導されており,これが優先的なPG合成を支えたと解釈されます(図2).rRNAの分解は細胞の生育速度の低下に対応した,余剰となったリボソームの分解を反映し,また,それにより遊離したリン酸はPG等,他のP化合物の合成に用いられたのでしょう.これは光合成生物で新規に見出されたPUE向上のための応答です.


【研究内容と成果 2】
 論文2ではSynechocystisのΔppk1を作製・解析しました.通常の硫黄十分(+S)の生育条件下,あるいはpolyPが大量に蓄積する硫黄欠乏(-S)下のいずれでも,Δppk1は野生株(WT)に比べ,polyP量の大幅な減少が認められました.したがって,polyP合成は主にppk1が担うことが示されました(図3A-D).興味深いことに,Δppk1では細胞の全P量がWTの46%に低下すること,即ち,PUEの向上が見出されました(図3A).一方,-S下,WTでは細胞の全P量が+S下の5倍に増加しましたが,その増加量はpolyPの蓄積量を大きく上回りました.これに対し,-S下,Δppk1では細胞の全P量は低いままでした.これらの結果は,WTでは-S下,外界Pの細胞内への取り込み能が増強し,その大部分はpolyP以外のP化合物の蓄積に利用されること,そしてその増強にppk1が必要であることを示しています.


 Δppk1はWTと同等の生育と光合成能を示しました(図4A,B).つまり,Δppk1ではPUEが高まると同時にバイオマス生産能が維持されることが明らかとなりました.しかし,栄養が枯渇し静止期に入ると,あるいは-S条件下ではΔppk1はWTに比べて生育の回復能が低下しました(図4A挿入図,図4C).特に静置培養時,-S条件はΔppk1の細胞死を強く誘導しました(図4D).したがって,SynechocystisにおいてpolyP,そして細胞の全Pの量的決定に関わるppk1は通常条件下では必要とされないが,-S等の栄養欠乏ストレスへの順応には重要であると明らかになりました.

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