生物多様性の力で虫害を防ぐ〜混ぜて植えるべき植物の遺伝子型ペアをゲノム情報から予測〜
Digital PR Platform / 2024年10月7日 18時0分
今後の展開
近年、コムギやイネなど農業的に重要なさまざまな種についてゲノム情報が整ってきているため、新手法Neighbor GWASで連合抵抗性に有効な遺伝子型を予測し実証することが現実的になっています。
過去の研究で、特定の異なる植物種を混ぜて栽培すると病虫害を減らせることは知られており、南アメリカの伝統的農法ミルパなどでは実際に実践されてきました。しかし機械を用いる近代大規模農業では、異なった種を混ぜて栽培すると収穫などの管理が難しくなり、現実的ではありません。本研究では1つの種の中の遺伝的多様性に着目し、種内の異なる系統を混ぜて植えることで連合抵抗性を実現しました。さらに本研究では、収穫期がほとんど同じ 2系統で実証しており、農業的に重要な種でも同様に、既存の農業設備・手法を用いて栽培できる可能性が期待されます。
ヨーロッパ諸国などでは、生物多様性・環境保全の観点から、化学農薬の使用を制限する法律がすでに施行されています。その結果、農業の現場で病虫害が防ぎきれなくなることが懸念されます。日本の農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」でも、化学農薬の使用料50%低減が掲げられていますが、食糧安定生産と生物多様性・環境保護を両立させるのは容易ではありません。本研究は、二重の意味で生物多様性の重要性を示しています。まず、作物自身の生物多様性(種内の遺伝的多様性)を利用することで虫害を減らすことができ、さらに、農業の現場での殺虫剤の使用を低減することで昆虫などの生物多様性保全につなげられます。
さらに本研究は、基礎研究の観点からみて、植物個体間の相互作用研究のランドマークともいえます。本研究で扱った虫害に対する連合抵抗性は、おそらく植物間のコミュニケーションの氷山の一角です。生殖や資源をめぐる競争などの観点からも、新手法Neighbor GWASを用いることで、植物個体間の相互作用の重要性が今後ますます明らかにされていくと期待されます。本研究でも、揮発性物質の生産を駆動する植物ホルモンであるジャスモン酸*7に関わる遺伝子群を通じて、揮発性物質を介した植物同士のコミュニケーションが関わっている可能性が示されました。植物同士の相互作用のメカニズムには、揮発性物質の他にも、根を介したコミュニケーション、太陽光の避陰、昆虫を介した間接的相互作用など様々な可能性があります。これまで植物の遺伝子研究はほとんど実験室内の制御環境下で行われてきましたが、本研究のように野外圃場環境で研究することによって、未知の植物のコミュニケーションメカニズムの発見につながることも期待されます。
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