世界初!キュウリのベゴモウイルス抵抗性遺伝子を特定 世界中で問題となっている農作物のウイルス病被害低減に繋がる成果
Digital PR Platform / 2024年10月3日 20時5分
【本件の内容】
研究グループは、先行研究で、スペインおよびインドネシアにおいてベゴモウイルスの一種であるToLCNDVを単離して、キュウリなどへの効率的なウイルス接種法を確立しました。これらの研究成果を用いて、キュウリのベゴモウイルス抵抗性を遺伝子レベルで解析することで、抵抗性遺伝子の特定を試み、約1.5万の遺伝子から1つの原因遺伝子「RNA-dependent RNA polymerase(RDR)」を特定しました。また、ウイルス誘導性ジーンサイレンシング※3を用いた解析から、RDRによりキュウリがToLCNDV抵抗性を獲得していることも明らかにしました。また、ToLCNDVに弱い従来のキュウリと、抵抗性を示すキュウリが持つRDRのDNA配列を比較することで違いを発見し、その差異を判別するDNAマーカーを開発することで、ToLCNDV抵抗性の個体を確実に判別する手法を確立しました。
【論文掲載】
掲載誌:BMC Plant Biology(インパクトファクター:4.3@2023)
論文名:Cy-1, a major QTL for tomato leaf curl New Delhi virus resistance, harbors a gene encoding a DFDGD-Class RNA-dependent RNA polymerase in cucumber(Cucumis sativus)
(キュウリにおけるToLCNDV抵抗性に関与する主要QTLであるCy-1はDFDGD-Class RNA-dependent RNA polymeraseをコードする)
著者名:小枝壮太1,2、山本千尋1、山本浩登1、藤代康平2、森涼馬2、岡本桃花2、永野惇3,4、益子嵩章5
所属 :1 近畿大学大学院農学研究科農業生産科学専攻、2 近畿大学農学部、3 慶應義塾大学先端生命科学研究所、4 龍谷大学農学部、5 タキイ種苗株式会社
URL :https://doi.org/10.1186/s12870-024-05591-7
DOI :10.1186/s12870-024-05591-7
【本件の詳細】
今回の研究では、ToLCNDVに対して抵抗性を示すキュウリの系統であるNo.44を研究に用いました。No.44が持つ抵抗性遺伝子を特定するために、No.44と、ウイルスに感染すると発病する感受性品種である「相模半白節成」を交配して、その孫世代である交雑F2集団を準備しました。この交雑F2集団を用いて、RAD-seq解析※4による連鎖解析※5を行ったところ、キュウリの第1染色体および第2染色体に、抵抗性に関わる量的形質遺伝子座(QTL)を特定しました。さらに、遺伝解析を進めることで、第1染色体の候補領域を209kb(キロベース:DNAの塩基1個を1bと表記する)まで絞り込みました。
候補領域を詳しく調べた結果、そこには24個の遺伝子が存在し、遺伝子の配列と発現量の調査からRDRを含む7つを抵抗性候補遺伝子として絞り込みました。今回発見したRDRは、トマトのベゴモウイルス抵抗性遺伝子(Ty-1/Ty-3)、トウガラシの抵抗性遺伝子(Pepy-2)と非常に近縁な関係であったことから、RDRが抵抗性遺伝子であると強く示唆されました。
ToLCNDV抵抗性にRDRが関与していることと、他の候補遺伝子が関与していないことを実証するために、ベゴモウイルスに強いキュウリにおいて、ウイルス誘導性ジーンサイレンシングにより候補遺伝子の遺伝子発現を抑制し、さらにベゴモウイルスを感染させたところ、RDRの遺伝子発現を抑制した場合にのみ、キュウリがベゴモウイルスに感受性になることがわかりました。これらの結果から、キュウリはRDRの働きによりToLCNDV抵抗性を獲得していることが示されました。
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