腸内細菌叢を利用した肝細胞がんのモニタリングと免疫療法反応予測につながる技術を発見
Digital PR Platform / 2024年10月4日 11時6分
<研究方法>
本研究では、肝細胞がん患者の腸内細菌叢と免疫療法の反応との関係を解明することを目的に、アテゾリズマブとベバシズマブで治療を受けた22名の肝細胞がん患者と85名の健康な対照者から便サンプルを収集し、16S rRNA次世代シーケンスと定量PCR(qPCR)を用いて腸内細菌叢を解析しました。
その結果、肝細胞がん患者の腸内細菌叢には乳酸菌Lactobacillusや虫歯菌と同じ仲間のStreptococcus属、特にLactobacillus fermentumとStreptococcus anginosusが有意に多いことが明らかになりました。免疫療法の反応性に関しては、腸内で多く存在するBacteroides属細菌の種類が関与しており、非反応群(NR)でBacteroides stercorisが、反応群(R)ではBacteroides coprocoraが多く認められました。さらに、qPCR解析により、肝細胞がん患者ではStreptococcus anginosusのレベルが高く、健康効果が高いとされる胆汁酸であるイソアロリトコール酸の合成に必要な5α-還元酵素遺伝子の発現が低下していることが判明しました。免疫療法に反応した患者では、非反応群に比べてBacteroides stercorisの量が有意に少ないことがqPCR解析でも確認されました。
これらの結果から、腸内細菌叢の変化が肝細胞がんの進行や治療効果に関連していることが示され、特定の細菌や遺伝子が肝細胞がんの免疫療法の反応予測に役立つ可能性が示唆されました。
<今後の展開>
腸内細菌叢の変化を活用し、腸内細菌を標的とした新たな治療法の開発が期待されます。特定の菌種や遺伝子の増減をqPCRなどで迅速に評価することで、肝細胞がんの進行状況や免疫療法の効果を予測することが可能になると考えられます。また、腸内環境を改善するプレバイオティクスの導入も有望です。プレバイオティクスは有益な腸内細菌の成長を促進し、腸内フローラのバランスを回復させる効果があり、これによって肝細胞がん患者の腸内細菌叢の健全化や免疫応答の改善が期待できます。例えば、5α-還元酵素遺伝子を持つBacteroides属の菌を増やすことが、免疫療法の効果を高める可能性があります。
将来的には、腸内細菌叢の詳細な解析やqPCRを用いた特定遺伝子の定量が、肝細胞がんのリスク評価や病状モニタリング、さらには免疫療法の効果を予測するための非侵襲的で費用対効果の高い手法として広く利用されることが考えられます。加えてプレバイオティクスを組み合わせることにより、個別化医療の実現や治療効果の最適化、肝細胞がん患者の予後改善につながる新しい治療戦略の開発が期待されます。
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