【東京医科大学】白血病における蛋白質分解の重要性を解明 ~がん抑制遺伝子の分解がもたらす悪性化の意義と対策~
Digital PR Platform / 2024年10月7日 12時38分
【研究の背景】
ゲノム解析技術の進歩により、白血病を含むがんの遺伝子レベルでの異常の多くは同定され意義も解明されてきています。一方、がん遺伝子やがん抑制遺伝子が蛋白質レベルでどのような制御を受けているかは不明な点が多く存在します。C/EBPαはAMLのがん抑制遺伝子として重要性が早くから着目され、遺伝子変異により失活している症例も認められます。しかしながら、大部分のAMLではC/EBPαは遺伝子レベルでは正常であるため、蛋白質レベルでの制御機構の解明が待たれていました。
研究チームは、マウスAMLでHOXA9の協調遺伝子としてTRIB1を同定し、AML発症に重要な機能としてC/EBPαをCOP1にリクルートして分解することと、MEK/ERKの機能亢進であることを明らかにしていました。TRIB1/COP1は生物の進化の過程で古くから保存されているシグナル系ですが、この系をがん細胞がどのように利用しているのか未解明な部分が多く、AMLの治療における有用性も不明でした。
【本研究で得られた結果・知見】
AMLにはTRIB1/COP1に依存して増殖するグループが存在することがわかりました。このような症例群は、TRIB1とCEBPAのmRNA発現の高い特徴があり、TRIB1/COP1系の遮断によりC/EBPα蛋白質の急速な増加がもたらされて白血病細胞は死滅します(図1)。研究チームは現在TRIB1/COP1系を標的とする治療薬の開発を推進していますが、開発が進展したあかつきにはTRIB1/CEBPAをバイオマーカーとするAML症例を選別して有効な治療を確立することが期待できます。特に、正常核型AMLに多いNPM1変異症例の中には対象候補となる症例が集積していることも今回の研究で明らかになりました。
転写レベルでの遺伝子発現と蛋白質量の大きな乖離が観察されたことも、本研究で得られた特筆すべき知見です。mRNAと蛋白質の量は通常正の相関を示していますが、TRIB1関連AMLではC/EBPαのmRNAと蛋白質は逆相関を示すことがわかりました。また、TRIB1蛋白質は遺伝子の活性化が生じても検出が困難で、その原因は不明でした。従来の研究では、TRIB1の役割はC/EBPαをCOP1にリクルートして分解することだけが提唱されていましたが、本研究によりTRIB1自身も大部分がCOP1によるユビキチン化で分解されていることが明らかになりました(図2)。
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