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外部磁場を必要としない新型超伝導磁束量子ビットを世界で初めて実現 ~量子コンピュータの小型化に貢献する素子応用を拓く~

Digital PR Platform / 2024年10月15日 14時4分


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 その解決策として、東北大学の山下太郎教授(研究当時: 名古屋大学大学院工学研究科 准教授)らが提案したπ接合を磁束量子ビットに組み込む方法があります(図1(b)参照)。π接合は、強磁性体を組み込んだジョセフソン接合であり、外部から磁場を印加せずに180度(π)の位相差を生じるため、自発的に最適動作点にバイアスすることが可能になります。これにより、外部ノイズを抑え、回路が簡素化され、量子ビットの集積化が容易になることが期待されています。


[画像3]https://digitalpr.jp/simg/2341/96915/700_194_20241015091704670db480a6b27.JPG


【今回の成果】
 今回、我々はシリコン基板上に結晶成長させた窒化ニオブを用いた窒化物超伝導量子ビットの技術(2021年9月20日NICT報道発表)と、π接合の技術(2017年11月15日NICT報道発表)を組み合わせ、π接合を持つ磁束量子ビットを作製し、世界で初めてゼロ磁場で最適動作することを実証し、そのコヒーレンス時間の測定に成功しました。
 これまでの研究では、カールスルーエ工科大学(ドイツ)のUstinov教授研究チームのFeofanovらがNb/AlOx/Nbジョセフソン接合とNb/CuNi/Nbπ接合により構成された位相量子ビット*6において4ナノ秒のコヒーレンス時間を報告[4]しているほか、同チームのShcherbakovaらが磁束量子ビットへのπ接合導入を試みましたが、量子ビット動作は確認されず、コヒーレンス時間の測定には至りませんでした[5]。
 我々は、CuNiよりも安定したπ状態を維持できるPdNiを採用し、NbN電極上にπ接合を形成しました。さらに、NICTが開発したNbN/AlN/NbNジョセフソン接合とNTTが開発した3次元共振器用の磁束量子ビットの最適デザインを組み合わせ、ゼロ磁場で最適動作する新型超伝導磁束量子ビットを作製しました(図2参照)。NTTの長寿命量子ビット測定系を用いた測定の結果、ゼロ磁場が最適動作点であることを確認し、1.45マイクロ秒のコヒーレンス時間を観測しました(図3参照)。これは、従来のπ接合を組み込んだ位相量子ビットと比べて360倍のコヒーレンス時間の改善となります。一方で、π接合を持たない従来の磁束量子ビットでは16マイクロ秒のエネルギー緩和時間が得られており(2021年9月20日NICT報道発表を参照)、現状のNbN/PdNi/NbN積層構造によるπ接合はコヒーレンス時間の改善という課題があることも世界で初めて明らかにしました。
 今回の成果は、外部磁場が不要で、マイクロ秒オーダーのコヒーレンス時間を持つ磁束量子ビットを世界で初めて実現したもので、量子ビットを含む様々な量子回路の微細化・集積化に重要な技術であり、外部磁場が不要になることで、回路の簡素化や省エネ、コスト削減に貢献するものです。

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