精神発達遅滞やてんかんの発症に関わる転写制御因子(ARX)の働きを解明
Digital PR Platform / 2024年10月25日 10時0分
新しい治療法の開発に期待
東京慈恵会医科大学 薬理学講座 籾山俊彦名誉教授、鈴木江津子講師、愛知県医療療育総合センター 発達障害研究所 西條琢真研究員、国立精神神経研究センター 北村邦夫研究員らの研究グループは、精神発達遅滞やてんかんの発症に関わる転写制御因子「ARX(aristaless-related homeobox gene ) 」が、脳の運動制御に重要な線条体(注)アセチルコリン性介在ニューロンの活動やシナプス伝達を調節する仕組みを明らかにしました。
本研究成果は「European Journal Neuroscience」誌に掲載されました(2024年10月Volume 60, pages 6015-6029)。
~ 研究成果のポイント ~
●二種類のARX遺伝子(PLおよびGCG)を導入した遺伝子改変マウスは、線条体アセチルコリン性介在ニューロンの活動およびシナプス伝達に異常が認められました。
●ARX遺伝子異常が、大脳基底核のニューロン活動、およびシナプス伝達に関与していることが明らかとなりました。
研究背景
Aristaless-related homeobox gene (ARX) 遺伝子は転写制御因子であり、その変異によってX染色体型滑脳症および精神遅滞が生じる可能性があります。これまでの研究によれば、ARXは大脳皮質や前脳部のGABA性およびアセチルコリン性ニューロンの増殖、移動に関与し、変異によっててんかんや認知機能の欠陥を生じることが知られています。しかしながら、ARXの機能と病態との関連の機構は不明です。
マウスでは、ARXの内で、PLおよびGCGの変異によって精神遅滞を生じることが報告されています。またPLあるいはGCGを導入したマウスでは、線条体におけるGABA性ニューロンおよびアセチルコリン性介在ニューロン数の顕著な減少が認められていますが、変異後も生存している線条体のニューロンの神経生理学的および形態学的変化は不明です。
研究内容
本研究では、二種類のARX遺伝子であるPLおよびGCGを導入した遺伝子改変マウスの脳からスライス標本を作製し、線条体のアセチルコリン性介在ニューロンからホールセルパッチクランプ記録を行ないました。そして記録ニューロンから100ミクロン程度離れた周辺部位に電気刺激を与えることによって、GABA性抑制性シナプス後電流(IPSCs)あるいはグルタミン酸性興奮性シナプス後電流(EPSCs)を誘発し、解析を行なうことによって以下の結果を得ました。
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