精神発達遅滞やてんかんの発症に関わる転写制御因子(ARX)の働きを解明
Digital PR Platform / 2024年10月25日 10時0分
1) マウスおよびGCGマウスのアセチルコリン性介在ニューロンの膜抵抗は野生型マウスのものより有意に小さかったが、静止膜電位、活動電位の閾値、自発発火頻度には有意差がなかった。
2) GCGマウスでは、興奮性シナプス後部であるアセチルコリン性介在ニューロンの細胞膜上にある2種のグルタミン酸受容体(AMPA受容体およびNMDA受容体)を介するEPSCsの割合が野生型およびPLマウスにおける割合より有意に小さかったが、PL
マウスと野生型マウスとの間には有意差がなかった。
3) ドーパミンD2型受容体を介するIPSCs抑制作用は、PLマウス、GCGマウスおよび野生型マウスの間で有意差はなかったが、PLマウスおよびGCGマウスでは、抑制作用の作用部位が野生型マウスとは異なっていた。
以上の実験結果から、ARX遺伝子改変マウスでは線条体のニューロン活動、シナプス伝達に異常が認められ、大脳基底核機能におけるARXの役割が明らかとなりました。
本研究の社会的意義
本研究によって、ARX遺伝子改変マウスの線条体アセチルコリン性介在ニューロンの膜特性およびシナプス伝達に異常が認められることが明らかとなりました。ARX遺伝子異常による病態の基礎として大脳基底核のニューロン活動、およびシナプス伝達の異常が存在することが示唆され、病態の一端が解明されるとともに、新たな治療法の開発にもつながることが期待されます。
研究費
本研究は、科研費(17K07063, 19K23370)および上原記念生命科学財団の支援を受けて実施されました。
論文情報
Momiyama T, Nishijo T, Suzuki E, Kitamura K.
Synaptic and membrane properties of cholinergic interneurons in the striatum of aristaless-related homeobox gene mutant mice
European Journal of Neuroscience 60, 6015-6029, 2024
https://doi.org/10.1111/ejn.16542
(注)線条体は大脳基底核の出力核であり、構成するニューロンは大半がGABA性ですが、少数のアセチルコリン性介在ニューロンが大脳基底核のアセチルコリン供給源となっています。
メンバー:
・東京慈恵会医科大学 薬理学講座 名誉教授 籾山俊彦
講師 鈴木江津子
・愛知県愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 研究員 西條琢真
・国立精神神経研究センター 研究員 北村邦夫
【本研究内容についてのお問い合わせ先】
東京慈恵会医科大学 薬理学講座 名誉教授 籾山俊彦 電話 03-3433-1111(代)内線2255
【報道機関からのお問い合わせ窓口】
学校法人慈恵大学 経営企画部 広報課 電話 03-5400-1280 メール koho@jikei.ac.jp
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