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【甲南大学】昆虫精子の生存判定を短時間、高精度かつ安価に行える方法を確立

Digital PR Platform / 2024年10月25日 20時5分


 その結果、1µg/mLのアクリジンオレンジと150µMのPropidium Iodideを使用すると、染色時間0分(染色液を入れた直後)でも生きている精子と死んだ精子を十分に染めわけることができました(図2)。
 従来のアリ精子の染色には17分(SYBR 14で10分、Propidium Iodideで7分)を要しますが、今回確立した方法では染色時間を大幅に短縮できました。また、アクリジンオレンジを使用することで、使用する試薬のコストをSYBR 14の約30分の1に削減することができました。さらに、撮影された写真の、アクリジンオレンジ由来の緑色と、Propidium Iodide由来の赤色でそれぞれ染色された精子を、画像解析ソフトを用いて自動でカウントし、その後研究者の目で再確認することで、労力の削減と、計算結果の正確性を両立しました。

 次に、この方法が正確に、実際の精子生存率を反映しているかを調べるために、生きた精子とあらかじめ加熱して死なせた精子を任意の割合で混ぜ、確立した方法を用いたところ、高い精度で生存率を推定できることが確認できました(図3)。


 最後に、今回確立した方法を用い、アリとは異なる甲虫目に属するチャイロコメノゴミムシダマシでも、アリと同様に正確に生存判定をすることができました。鱗翅目に属するカイコの精子では、生存精子の割合を調整することが困難だったため、今回確立した方法で精子生存判定の正確性を確かめることは困難でしたが、蛍光染色により精子を染め分けることはできました。また、束状になっているカイコのオス精子や、尾部が長いキイロショウジョウバエの精子は、取り出した際に頭部が重なった精子が多かったため、蛍光染色後、画像解析ソフトを用いた生存精子と致死精子の自動カウントを正確に行えませんでした。そのため今後は、それぞれの種の精子の特徴に合わせた解剖方法や、精子を希釈する倍率を最適化することで、本研究で確立した精子染色・観察プロトコールをさまざまな種で適用できると期待できます。

【今後の展望】
 精子の長さや密度は種により大きく異なりますが、それぞれの種の精子の特徴に合わせて解剖方法などを工夫することで、本研究で確立された方法により迅速かつ正確な生存判定ができる可能性があります。そのため、昆虫以外の種、例えば従来の精子染色方法が使われてきた魚類や鳥類の精子にも適用できることが期待できます。

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