【名古屋大学】自然音や音楽の"振動触覚"でメンタルヘルスケア ~低周波刺激による症状緩和の検証へ臨床研究を開始~
Digital PR Platform / 2024年10月29日 20時5分
この結果をうけ、同様の低周波音(15-40Hz)をマウスに暴露する実験を行ったところ、認知機能が向上することを確認しました。さらに、筋力(握力)の向上や耐糖能の向上、アンチエイジング遺伝子の発現なども確認されました(図2)(※)。
(付記)
同様の試みはマサチューセッツ工科大学(MIT)のLi-Huei Tsai教授らのチームが行なっています。彼らは認知症になると脳波のガンマー波(40Hz-)が減衰することを発見しました。彼らは、40Hz変調した可聴音(歪んで聞こえる音になります)と40Hzでの光の明滅で神経刺激を与えるとガンマー波が増強させることを確認し、認知症へ応用するための臨床研究をすすめています。
【臨床研究の目的】
本臨床研究の主な目的は、自然音や音楽に含まれる低周波成分を振動触覚に変換することで、睡眠の質を改善し、精神的症状を緩和できるかを評価することです。特に、薬物に頼らず、非侵襲的なケア方法として、被験者の身体的負担を軽減しながら精神的な健康を支援します。対象疾患は、うつ、不安症、多動性障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などで、評価項目は睡眠の質や精神的症状の改善度を測定します。
本研究では、被験者が自宅で簡便にセルフケアを実施できるように開発されたポータブル型顔型振動呈示装置(注5)を使用します(図3)。この装置は、自然音や音楽に含まれる低周波成分を振動として皮膚に伝える仕組みで、1日2回、各10〜20分間のセルフケアを行います。通院の必要がなく、日常生活に取り入れやすい設計です。
【研究体制】
名古屋大学大学院情報学研究科の鈴木 泰博 准教授が研究を統括し、London Trusted Therapyのオレナ・エドワーズ(Olena Edwards)博士がロンドンにおいて臨床試験を主導します。本研究の実施は倫理審査委員会の承認を得ています。被験者の方々には、研究の目的、方法、予想されるリスクと利益について十分な説明を行い、インフォームドコンセントを得た上で参加いただきます。振動触覚技術の安全性については、これまでの基礎研究において確認されており、本臨床研究でも被験者の安全を最優先に考慮しています。研究には約30名の被験者(男性14名、女性16名)の参加を予定しています。
【予想される成果と今後の展望】
本研究によって、睡眠の質の向上や、うつ、不安症、ADHD、PTSDなどの症状改善が期待されます。過去の基礎研究で確認された認知機能の向上やフレイルの改善に加え、今回の臨床試験では睡眠を中心としたメンタルヘルスケアの新たな可能性が見出されると考えられています。
また、自然音や音楽に含まれる低周波成分を活用した振動触覚技術が、メンタルヘルスケアの新たな選択肢として広く活用される可能性を探ります。今後、より大規模な臨床研究や他のメンタルヘルスケアへの応用も視野に入れて研究を進めていく予定です。研究成果は国内外の学会や論文を通じて発表し、さらなる研究の発展を目指します。
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