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【東芝】リチウムイオン電池の酸化物負極を低コスト・低環境負荷でリサイクルする手法を開発 ~高出力・長寿命なニオブチタン酸化物負極等の簡易リサイクルを実現~

Digital PR Platform / 2024年11月6日 10時21分

開発の背景
 カーボンニュートラル社会の実現に向け、自動車をはじめとしたさまざまなモビリティの電動化が世界的に進む中、リチウムイオン電池は必要不可欠な部品となっています。
 そのような中、資源循環や環境負荷の観点から、欧州においては昨年「欧州電池規則」が施行され、国内においても2022年に蓄電池のサプライチェーン構築を目指して経済産業省が「蓄電池のサステナビリティに関する研究会」を発足するなど、リチウムイオン電池のリサイクルと製品のCFPの低減に対するニーズがグローバルで高まっています。
 こうしたニーズを受け、現在、コバルト、ニッケルを含む正極材のリサイクルは進んでいますが、一般的なリチウムイオン電池の負極材である黒鉛は、長時間の使用による構造変化や劣化に伴う反応物の付着などで再生に必要な工程が複雑となるため、コスト面での課題が大きく、リサイクルが進んでいないのが実態です。しかし、電池においては、負極材は正極材同様に一定のCFPがあるため、リサイクルによるCFP削減が必要で、簡易なリサイクル手法の開発が求められていました。当社は、黒鉛負極の電池よりも高出力・長寿命で、今後電動化が期待される商用車向けに適した酸化物負極電池を開発しており、今般、黒鉛と比較してリサイクルしやすい酸化物負極の特徴を生かして、そのリサイクル手法を開発しました。
 電池の活物質のリサイクルには、活物質を構成元素まで分解して回収後、再度、活物質を合成するリサイクル方法の他に、活物質の構造を維持したまま再利用する「ダイレクトリサイクル」があります。構成元素まで分解するリサイクルは、再度活物質として利用するための再合成にエネルギーを必要としますが、ダイレクトリサイクルでは活物質の再合成が不要なことから、コストと環境負荷が小さく、近年研究開発が進められています。

本技術の特長
 当社はこうしたニーズを踏まえ、高出力で長寿命である酸化物負極電池に対する「ダイレクトリサイクル技術」を開発し、酸化物負極電極から活物質の構造や特性を維持したまま集電箔と分離し、そのまま再利用できることを実証しました。
 ダイレクトリサイクルを実現するためには、リサイクルプロセスにおいて活物質の構造安定性が重要になります。酸化物負極材の中でも、当社が開発する酸化物負極粒子であるNTOは、安定した活物質構造を持っています。この特長を生かして、熱処理を行うことにより、活物質の特性を維持したまま負極中のNTOを接着するバインダー成分を分解し、集電箔から剥離を促して容易に分離・回収する手法を開発しました(図1)。また本手法は、電極のリサイクルで行われる熱処理の中では低温で処理することができるとともに、回収した活物質は、不純物成分を除去した後、そのまま再利用することが可能です。
 当社は、電池製造の工程で出る廃材を模擬した電極、およびEOL(End of Life)までの劣化を模擬した電池からリサイクルしたNTOを用いて電極を作製し、電池にして性能を評価したところ、活物質の性能の指標である活物質容量は新品と同等の97%以上を維持していることを確認しました。また、充放電を繰り返しても、新品と同等の容量を維持し、長寿命であることを確認しました(図2)。

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