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光で動くプラスチックの多彩な変形を実現~二光子吸収プロセスによる高分子材料の精密駆動に成功~

Digital PR Platform / 2024年11月8日 14時5分



【研究内容】

1.背景

 プラスチックやゴムなどの高分子材料は軽量かつ柔軟であり、日常生活でも広く用いられています。近年、光・電気・熱等の外部刺激に応答して変形する高分子材料が盛んに研究されており、人に優しい柔らかい材料で作られたソフトロボット等への応用が期待されています。特に、光に応答して変形する材料(光運動材料)は配線が不要であり、ロボットの小型化に貢献できるものと見込まれています。
 アゾベンゼンを有する架橋高分子は、典型的な光運動材料として研究されてきました。アゾベンゼンは、光照射により分子形状が変化します。通常は棒状のトランス体が安定ですが、紫外光を照射すると、アゾベンゼンは光を吸収した後、折れ曲がったシス体に変化します。また、架橋高分子は、多数の分子が網目状に繋がったものです。網目の中にアゾベンゼンを組み込むと、トランス体からシス体への分子形状変化により網目が変形します。この網目の変形により、材料の変形が引き起こされます。その後、可視光を照射するとシス体がトランス体に戻り、材料形状も復元します。
 光運動材料がどのように変形するかは、アゾベンゼンの分子形状変化が試料中のどの位置で起こるかによって決まります。アゾベンゼンは、紫外光を効率よく吸収するため、フィルム状の光運動材料に紫外光を照射すると、試料の表面近傍において紫外光が吸収されます。そのため、試料表面においてトランス体からシス体への分子形状変化と、網目の収縮が起こります。結果として、フィルムは入射光に向かって屈曲することになります。
 従来の光運動材料では、上述のように試料表面近傍において光吸収や変形が起こります。もし、試料の表面だけではなく、任意の位置において局所的な変形を引き起こすことができれば、より自由度の高い、多彩な変形の発現が期待できます。二光子吸収は、光子の密度が高いときに生じ得る現象であり、これを適用することにより光の焦点近傍で選択的に光吸収を起こすことができます。従って、光運動材料に二光子吸収を適用できれば、試料中の任意の位置で変形を引き起こすことが可能になります。

2.研究内容と成果

 本研究では、二光子吸収分子を架橋高分子に組み込むことにより光運動材料を作製しました。二光子吸収分子として、アゾベンゼンの類似体であるアゾトランを用いました。まず、アゾトランの二光子吸収特性を評価したところ、フェムト秒レーザー*²⁾照射下において、良好な二光子吸収を示すことが明らかになりました。また、二光子吸収後にトランス体からシス体への分子形状変化も起こることが分かりました。
 アゾトランを有する架橋高分子のフィルムに、フェムト秒レーザーを集光して照射すると、照射部位においてフィルムが折れ曲がるように変形しました。この際の照射スポットのサイズは50 μm以下であり、極めて微小な領域において局所的な変形が起こることが明らかになりました。また、レーザーの焦点位置を変化させることにより、屈曲方向を制御することができました。レーザーの入射側から見て、フィルムの奥側に集光すると奥側に屈曲し、手前側に集光すると手前側に屈曲しました。さらに、長方形のフィルムに対して、長辺に沿ってレーザーの焦点位置を動かしながら照射すると、フィルムの片方の長辺が収縮することにより、フィルムが螺旋状に変形しました。以上のように、二光子吸収プロセスの適用により試料中の任意の位置で変形を引き起こすことが可能になり、光照射による精密かつ多彩な運動を実現しました。

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