1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

神経-肝型ミトコンドリアDNA枯渇症の新規原因遺伝子を特定 ~世界初の症例を報告~

Digital PR Platform / 2024年11月12日 14時5分


図2参照

患者由来線維芽細胞において、MICOS10 遺伝子から発現するタンパク質であるMIC10の量が著しく減少していることも明らかにしました(図3)。図3に示すように、MIC10はMICOS複合体の一つのコンポーネントであり、この消失はミトコンドリア内膜に存在するクリステ構造に大きな影響を与えると考えられました。


図3参照

電子顕微鏡により、ミトコンドリアクリステの形態変化を観察しました。その結果、患者由来線維芽細胞において、クリステが消失しているミトコンドリアが多数観察されました(図4)。さらに、正常型のMICOS10を患者由来線維芽細胞に発現させることによって、クリステ形態の異常を回復できることも明らかにしました。また、それに伴ってミトコンドリアにおける酸素消費量も回復したことが確認されました。
以上より、神経-肝型ミトコンドリアDNA枯渇症の新規の原因遺伝としてMICOS10 遺伝子異常を特定することができました。

図4参照

【今後の展開】
本成果において、神経-肝型ミトコンドリアDNA枯渇症の原因として、MICOS10 遺伝子の異常を世界で初めて報告しました。また、先行研究では、MICOS13遺伝子を神経-肝型ミトコンドリアDNA枯渇症の原因として報告していました(参考文献)。MICOS13遺伝子はMIC13タンパク質をコードしており(図3)、MICOS複合体とミトコンドリアDNA枯渇症の関連が示唆されていました。今回の発見においても、MICOS複合体のコンポーネントであるMIC10との関連が示され、MICOS複合体とミトコンドリアDNA枯渇症の関連が深いことが明らかになりました。これらは、ミトコンドリアクリステ形成が、ミトコンドリアDNAの維持に重要であることを示しています。現在、新規治療薬として期待されているMA-5は、ミトコンドリアクリステ形成を促進するものであり、これがミトコンドリアDNA枯渇に対しても効果を発揮する可能性を本研究が示唆しています。

【用語解説】
*1 全ゲノム解析
全ゲノム解析(Whole genome sequencing; WGS)は、文字通り全ゲノムを対象とした、配列を解読する解析手法です。全エクソーム解析で対象としない遺伝子間領域やイントロンまでも解析範囲となるため、全エクソーム解析では分からない遺伝子の異常を明らかにすることができます。
*2 RNAシークエンス
オミクス解析のひとつであるトランスクリプトミクスはRNAの発現を対象とした解析です。トランスクリプトミクスの解析方法として、RNAシーケンスが最も主流な方法となっています。主にメッセンジャーRNA(mRNA)を対象として、全遺伝子の発現を網羅的に解析するものです。
*3 MICOS複合体
MICOS複合体は、Mitochondrial Contact Site and Cristae Organizing System(ミトコンドリア接触部位およびクリステ形成システム)の略称です。この複合体は、図3に示すような複合体であり、ミトコンドリアの内膜に位置し、クリステと呼ばれるミトコンドリア内膜の折り畳み構造の形成と維持に不可欠です。
*4 AlphaFold
AlphaFoldは、GoogleのDeepMindによって開発された人工知能システムです。このプログラムは、タンパク質の折り畳み構造を原子レベルの精度で予測することができます。2024年のノーベル化学賞の受賞対象となりました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください