Butterfly glioblastomaの発生起源の解明~大脳半球発生なのか?~--北里大学
Digital PR Platform / 2024年11月19日 14時5分
■研究内容と成果
本疑問を解きうる画像が図3になります。脳梁に限局した異常信号が認められ、3か月後にbutterfly glioblastomaに変化していますが、腫瘍成分は脳梁に限局しています。即ち、腫瘍進展を解き明かしうる経時的画像を偶然にも取得できたことで、butterfly glioblastomaが脳梁からも発生しうるのだ、という着想に至りました。確かに、脳梁発生のglioblastomaが存在するのであれば、図2の症例に大脳半球成分がないことの説明がつきます。
【解析対象】Glioblastomaは10万人に6人未満の希少がんになります。さらに、butterfly glioblastomaは、膠芽腫例全体の1割弱の頻度であり、その希少性から解析対象の十分な取得が困難でした。まず、脳梁発生の仮説を検証するために、344例のglioblastoma自験例から34例のbutterfly glioblastomaを抽出しました。しかし、それだけでは症例数が十分でなく、976例のglioblastoma公共データベース(TCGA-GBM, CPTAC-GBM, IvyGAP, UPENN-GBM)から、臨床データ、分子データ、そして腫瘍体積データの全てが取得可能な425例を抽出し、その中から46例のbutterfly glioblastoma例を抽出し解析対象としました。
【画像解析】図3の様な、経時的画像が全例で得られれば、発生起源がどこであるか1例1例明確に結論付けることができます。実際には、経時的画像の取得はわずか4例で、脳梁発生を示唆するものは図3の1例、大脳半球発生を示唆するものは3例でした。そこで、解析対象となる全80例の各症例において、腫瘍体積を、脳梁部分と大脳半球部分に分けることで、どちらの領域に腫瘍の主体積が存在するかを計算しました。脳梁部体積が腫瘍全体積の50%以上の場合を脳梁タイプ (CC-type, corpus callosum-type)、50%未満を大脳半球タイプ (Hemispheric-type)に分類すると、脳梁タイプの予後が有意に不良であることがわかりました。
【マルチサンプリング解析】手術時にマルチサンプリングが6例で可能でありました。画像解析で大脳半球タイプであった3例のうち2例で、大脳半球腫瘍に比し脳梁部腫瘍で遺伝子変異の蓄積を認め、分子学的に大脳半球から脳梁方向に進展していることが示唆されました (代表例図4A)。一方で、画像解析で脳梁タイプであった3例全例で、大脳半球と脳梁の変異が同じでマルチサンプリングで進展方向を示唆することはできませんでした (図4B)。
【分子学的解析】Glioblastomaに高頻度に認められるTERT, EGFR, CDKN2A, PTENといった変異の頻度は両タイプで有意差を認めませんでした。しかしながら、MGMTプロモーター領域のメチル化は有意に脳梁タイプで高率であることがわかりました。
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