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【東芝】超伝導量子コンピュータに利用される東芝提案の素子「ダブルトランズモンカプラ」で世界トップレベルの2量子ビットゲート性能を達成 ー量子コンピュータの高性能化を実現し、社会課題の解決に貢献へー

Digital PR Platform / 2024年11月22日 10時5分

開発の背景
 近年、従来のコンピュータでは解くことが難しい計算課題を解決できると期待される量子コンピュータの研究開発が世界中で活発に行われています。量子コンピュータは、原子や分子といったミクロな世界を記述する物理理論である量子力学の原理に基づいて動作する全く新しいコンピュータです。現在の量子コンピュータは、量子計算における基本操作である2量子ビットゲートの信頼性が十分でなく、性能の改善が必要です。量子コンピュータの実現方式には、気体の原子1つ1つを用いるものから超伝導体からなる電子回路を用いるものまで様々ありますが、中でも超伝導方式は、固体素子であるために安定性・集積性に優れていることに加え、量子ゲートの忠実度が高いことから、有望な実現方式として期待されています。
 超伝導方式にも、その実装には様々なものがあります。まず量子ビットには、トランズモン型や比較的新しいフラクソニウム型(*8)など、複数のタイプがあります。トランズモン型は最もシンプルな超伝導量子ビットで、現在の超伝導量子コンピュータにおいて最も標準的に用いられています。さらに、2量子ビットゲートに必要な量子ビット間の結合を実現する方式にも、直接キャパシタで結合するものから、間に可変結合器を挟むものまで様々です。東芝が考案した「ダブルトランズモンカプラ」は、トランズモン型の超伝導量子ビットを2つ含む構成の可変結合器で、周波数が大きく異なる2つの「周波数固定トランズモン量子ビット」に対して、結合のオフと高速な2量子ビットゲート操作を両立できます。提案した方式を実現するためには、ゲート操作の時間に比べて十分長いコヒーレンス時間が必要です。コヒーレンス時間を長くするには、実際の形状や用いる超伝導材料、周辺回路設計、作製プロセスなどを十分考慮する必要があります。一方、ゲート操作を高速に実行するには、量子ビット間の結合強度が大きいことが重要です。
 今回、東芝と理研の共同研究グループは、この方式の実験を世界で初めて実施し、その高い性能を実証することに成功しました。

本技術の特長
 「ダブルトランズモンカプラ」は2つの量子ビットを結合します(図1)。中央に3つのジョセフソン接合(*9)を含むループを有し(JJ3、JJ4、JJ5)、そのループ内の外部磁束Φex(*10)を電流で制御することで、2つの量子ビット間の結合を調整できます。今回、実際に回路を作製し(図2)、その高い特性を実証しました。
 まず、2つの量子ビット(Q1とQ2)の形状、材料、プロセスを工夫することにより、トランズモン量子ビットとして世界トップクラスのコヒーレンス時間の長さを実現しました。T1とT2という2種類の指標があり(*11)、Q1はT1が230μs、T2が360 μs、Q2はT1が210 μs, T2が130 μsというコヒーレンス時間を達成しました。これはゲート操作を行うのに十分な時間です。
 また、外部磁束を調整することで、結合強度の大きさを最大で約80 MHzまで大きくすることができ(図3右)、48nsという短いゲート時間を実現しました。
 さらに、今回の実験では、2つの量子ビットの周波数を4.314 GHzと4.778 GHzとし、離調(周波数差)を約460 MHzと大きくしました。離調を大きく取ることで、片方の量子ビットへの操作が他方にエラーを引き起こすクロストークエラーを抑制することができる一方、このように大きな離調の場合、従来の可変結合器は残留結合を数十kHzまでしか抑えることができませんでした。今回、外部磁束を適切に設定することで結合強度の大きさを約6 kHzにまで抑えることができ、「ダブルトランズモンカプラ」の特長の1つである小さな残留結合を初めて実験的に実証しました(図3左)。
 今回の実験では12時間という長時間の測定を実施しましたが、2量子ビットゲートの忠実度は常に高い値を保ち、平均で99.90%という世界トップレベルの性能を達成しました(図4)。

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