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【麻布大学】イエネコの高精度なゲノム解読と未解明の遺伝子群の発見 - 動物の個別化医療へ前進

Digital PR Platform / 2024年11月22日 14時5分

イエネコは2007年に最初の参照配列が公開され、以降様々な遺伝研究や獣医学研究がなされてきました。この参照配列は何度も更新され、現在のバージョン(felCat9)まで精度が向上してきましたが、それでもまだ配列解読時のエラーが存在することや、未解読の配列が多く存在していました。実際に、これまでの私たちの研究でも、この解読エラーが遺伝病の分析に悪影響を与えていることが示されています*1。また、イエネコは国や品種により遺伝的に多様であることが分かっています*2が、felCat9はアビシニアン種のネコに由来するDNAをベースにした配列であり、数多く存在するネコ種をカバーするには限界がありました。一方、一部の品種では他の品種との交配が認められており、そうした品種を使用した参照配列を構築することで、より多くのネコ種でより正確な遺伝的変異の検出が期待できます。

そこで本研究では、世界的にも人気があり、スコティッシュ・フォールドなど近縁な品種が多いという特徴をもつアメリカン・ショートヘアー(画像1)で高精度なゲノムの解読および参照配列の樹立を行うとともに、遺伝子の情報基盤となる転写物(RNA)の情報を詳細に解析し、より正確に、かつ多くの品種に応用できる参照配列の構築を目指しました。

・参照配列の開発

本研究ではまず、PacBio社のロングリードシークエンサーに加え、Illumina社のショートリードシークエンサー、Dovetail社のHi-C、Bionano社のSaphyrといった先進的なゲノム配列解読技術を活用し、メスのアメリカン・ショートヘアーのゲノム配列を解読し、参照配列を新たに開発しました。この参照配列は、アニコムの名を冠しAnicom American Shorthair 1.0 (AnAms1.0)と名付けました。

AnAms1.0を6つのネコ科動物の参照配列と比較したところ、参照配列の品質の良さを示す指標である配列のエラー率、再構築された塩基配列長の中央値(N50)、遺伝子の再構成のスコア(BUSCOスコア)が、いずれも既存のネコ科動物の中で最も良い値となっており、最も正確に再構成された参照配列であることがわかりました。解読が難しい嗅覚受容体の遺伝子群においても、AnAms1.0はfelCat9よりも多くの完全な遺伝子が再構成されていることがわかりました。

・遺伝子情報の解析

次に、一般的に使用される遺伝子の転写物を解読するRNA-Seqに加え、ロングリードシーケンサーによって転写物の全長を解読するIso-Seqにより、遺伝子の情報を詳細に解析しました。その結果、染色体上に存在する遺伝子のうち、1,685個の遺伝子が新たに検出されました。遺伝子は病気や形態形質などを形作る重要な因子であるため、今回の発見は、ネコの個別化医療や再生医療といった獣医療の発展に貢献すると考えられます。なお本研究で得られた正確性の高い遺伝子情報は、筋ジストロフィーに関与する遺伝子変異の同定と*1、再生医療への応用が期待できるネコのiPS細胞の作製の際にも実際に使用されました*3。
これらのデータは、国立遺伝学研究所の中村保一教授らが運営する独自のネコゲノムデータベースCats-I (キャッツアイ、https://cat.annotation.jp/
)やアメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)等で公開され、世界中の研究者に利用されています。

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