【東京農業大学(共同研究)】アザラシではフェロモンの受容器官が特殊な粘液の分泌器官に変化していることを発見
Digital PR Platform / 2024年11月25日 10時1分
二次的海棲適応における海水からの防御機構の可能性
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概要
帯広畜産大学 獣医学研究部門 近藤 大輔 准教授ら と 東京農業大学 生物産業学部 海洋水産学科 小林 万里 教授らの共同研究グループは、ゼニガタアザラシの鼻部の詳細をCTおよび解剖学的、組織学的に解析し 、フェロモンの受容器官を欠如する一方で、それに相当する部位が海水防御のためと考えられる酸性粘液を分泌していることを発見しました。本成果は、哺乳類動物における二次的な海棲適応のメカニズムに関する新たな知見を提供するものであり、国際学術誌『Scientific Reports』に発表されました。
本研究で発見された分泌器官は、その役割について幅広い研究が期待されますが、その周囲が頭蓋骨に被われているためサンプリング が非常に困難です。同グループはこの分泌器官の簡易的なサンプリング法を確立し、動物解剖を専門としない研究者であっても、頭蓋骨を傷つけることなく迅速に解析することが可能となりました。本法は 海洋哺乳類学の専門誌 Marine Mammal Science』に公開 されました。
解説
哺乳類の鼻部には、同種のフェロモンや外敵・獲物から放出されるカイロモン(受け手に有利に働く物質)といった化学物質を受容する「鋤鼻器」という器官が存在します。この鋤鼻器はヒトを含む高等霊長類や一部のコウモリ類に加え、海洋生活をする鯨類(クジラやイルカ)や海牛類(ジュゴンやマナティー)では消失しており、一般に水中生活では不要であると解釈されています。鰭脚類(アシカやセイウチ、アザラシ)は発達した鋤鼻器を持つイヌやクマなどと同じ食肉目に属する一方で、海中と陸地の両方で生活するため、鋤鼻器があるかどうかについては議論があります。複数の研究グループによる遺伝子解析では、アシカ科には鋤鼻器がありアザラシ科にはない、と同じ鰭脚類のグループ内でも相反する予測がなされており、その有無の直接的な検証が期待されてきました。
本研究では、ゼニガタアザラシの鼻部について、CT および解剖学的、組織学的解析を行い、フェロモン受容器官としての鋤鼻器が欠如していることを証明しました。さらに意外なことに、多くの陸生哺乳類では鋤鼻器とその関連構造(切歯管)が存在する部位が、外鼻孔の周辺へ酸性粘液を分泌するための特殊な器官に変化していることを発見しました。この粘液は海水中の塩類から鼻腔の粘膜を保護する働きがあると考えられ、アザラシが化学物質の認識よりも海水からの防御機構を発達させている可能性があります。
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