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ヒメツリガネゴケをモデルとしてメスの生殖器官発生を運命づける転写因子PpRKDの同定に成功

Digital PR Platform / 2024年11月22日 20時5分

  
(添付:図2.PpRKD誘導的発現株の発現誘導なしの場合と発現誘導ありの場合の茎頂の生殖器官)
 
3. PpRKDの発現誘導により、生殖器官の頂端細胞がメス型の分裂パターンを示す
さらに、2. で観察されたPpRKDの発現誘導によって促進されるメスの造卵器様器官の発生初期の細胞分裂パターンを、共焦点顕微鏡を用いて観察しました。ヒメツリガネゴケやその近縁種において、オスの造精器とメスの造卵器は、発生初期の頂端細胞の分裂パターンの違いによって、オスとメスは明確に区別することができることが分かっていました(図3上)。オスは二面切り出し*注3)タイプの分裂を繰り返す一方で、メスは三面切り出し*注3)タイプの分裂をすることで、後で卵へ分化する細胞系譜の細胞を生み出します。PpRKD誘導的発現株において、PpRKDを発現誘導すると、本来オスの造精器が発生するはずの生殖器官の頂端幹細胞が、典型的なメス型の三面切り出しタイプの分裂パターンに変化しており、発生運命がメスへと転換していることが分かりました(図3下)。この結果は、PpRKDを発現させるだけで、生殖器官の発生運命をメスへと転換可能であることを示しています。
 
(添付:図3.PpRKDを発現誘導したときの発生初期の生殖器官の頂端細胞の分裂パターン)
 
【今後の展開】
本研究で同定したヒメツリガネゴケのメス化因子PpRKDのゼニゴケのオルソログ*注4)(MpRKD)は、オス株とメス株両方において、性分化よりも後の発生段階である精子と卵の分化に働くことが、既に別の研究グループによって明らかにされていました。本研究から、ヒメツリガネゴケのメス化因子PpRKDは、オスの生殖器官発生や精子の分化には機能しないことが明らかになり、オルソログ関係にあるRKD転写因子が、ヒメツリガネゴケとゼニゴケとで異なる機能を果たすことが明らかになりました。また、本研究で同定したヒメツリガネゴケのメス化因子PpRKDは、ゼニゴケのメス化因子とは遺伝子の種類が異なっていました。コケ植物間で生殖器官自体の構造は似ているものの、その性をつくり分ける分子機構は互いに異なることが明らかになりました。
ヒメツリガネゴケのメス化因子PpRKDが属するRWP-RK転写因子のうち、陸上植物に最も近縁な藻類(ストレプト藻類)のヒメミカヅキモや、緑藻類のアオサにおいて性分化に機能する遺伝子が最近見つかってきています。これらの知見と私たちの本研究の成果は、RWP-RK転写因子が性を制御する機能を独立に獲得した可能性を示唆します。今後、さらなるRWP-RK転写因子の機能を解明することや、他の植物種におけるRWP-RK転写因子の機能を調べることで、植物の有性生殖システムの進化的な変遷を理解するための手がかりが得られる可能性が期待されます。
 
【用語解説】
・注1) 胞子体と配偶体:主に植物などで、ゲノムが2セットの世代が胞子体世代、ゲノムが1セットの世代が配偶体世代。

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