「電波少年的懸賞生活」とは何だったのか? なすび、自身の生活を“映画化”した監督と振り返る【NY発コラム】
映画.com / 2024年5月4日 10時0分
おそらく「電波少年」のボツ企画は、それまでにも絶対にあったはずなので「その一つになるかもしれない」と。放送をほとんどされないなかでも、「日本テレビのスタッフやプロデューサーに顔を覚えてもらえたら、次のきっかけになるのかもしれないなぁというぐらいの軽い気持ちでスタートしていたので“放送がない”ということもあり得ると楽観的に考えてました。
――本作で興味深いのは、多くの若者にとって、なすびさんが必死になって食にありつく姿が滑稽に見えていた一方で、戦争体験者がその光景を見て「戦時中に食にありつけない苦しみを思い起こした」と語っている点です。世代によって異なる違う視点で、この番組を鑑賞していたのが、非常に興味深かったんです。
クレア・ティトリー監督:視聴者は最初は笑っていても、だんだん笑っている自分に気づき、ちょっと気まずくなったり、自分自身に違和感を感じる人が多くいると思います。もっとも、そのような感情を経験し、自分自身を理解することは良いことではないでしょうか。これは、 日本の観客にとって(当時の番組が)どのようなものであったかを、伝えようとしたことのひとつだと思います。だからこそ、(そういった部分を)欧米の観客にも見てもらえるように、全てのグラフィックと音声を丹念に英語に翻訳したんです。
――なすびさんは「電波少年的懸賞生活」に出演されていた際、ノートに日記を記していました。当時を振り返ってみて、どのような心情を文字で表現していたのでしょうか?
なすび:精神的にどんどん追い込まれ、孤独との戦いになった時、日記を書くことが“誰かの目に触れる”、つまり“外の世界の人と繋がるための手段”になったんです。自分の気持ちを書くことによって、少しずつストレスを発散していたんだと思います。自分の気持ちをなんとか繋ぎ止める。ひとりではなくて、第3者にメッセージを残す。遺書ではないのですが、そういう自分の覚悟や内面を記すことで、自分の精神状態を保つみたいな意味合いもあったのかもしれません。感情を自分の中にも書き留めていくというか。それによって、自分がまだひとりではなく、外の誰かと繋がるための一つの手段として、何か書くことで“自分はひとりではない”と思わせるというか……精神状態を保つための手段のひとつだったのかなぁと思える部分はあります。
――数年前、リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた木村花さんが、SNSの誹謗中傷を受けたことで自ら命を絶ちました。リアリティ番組は、いかに線引きをしながら、手掛けるべきだと思いますか?
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