映画は「男性のまなざし」に満ち、実生活にも影響をもたらしている 3作品が日本初公開、ニナ・メンケス監督インタビュー
映画.com / 2024年5月11日 10時0分
「クイーン・オブ・ダイヤモンド」 (C)1991 Nina Menkes (C)2024 Arbelos
研ぎ澄まされた映像世界によって、アメリカ映画界の中でも唯一無二の存在として1980年代初頭から現在まで活動を続けてきた女性監督、ニナ・メンケス監督の作品が5月10日から公開される。このほど日本で初めて紹介されるのは、初の長編「マグダレーナ・ヴィラガ」と代表作「クイーン・オブ・ダイヤモンド」の劇映画2本、そしてドキュメンタリー「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」の3本だ。メンケス監督が自作を語ったインタビューを映画.comが入手した。
――現時点での最新作「ブレインウォッシュ」は、現在に至るまで映画がいかに「Male Gaze=男性のまなざし」に満ち、その描写がいかに我々の実生活にも影響をもたらしているか、多くの映画のクリップを用いて解き明かしていくドキュメンタリーです。この作品を作った理由を教えてください。
私の他の作品は内なるプレッシャーのようなものに駆り立てられて作ることが多いのですが、本作は逆でした。私は大学で映画の授業を受け持っており、本作で描かれているようなことを教えていて、それは学生のみに向けたレクチャーのつもりでした。しかし、EEOC(雇用機会均等委員会)での告発や#MeTooムーブメントが広がり、レクチャーをもとに記事を執筆してくれないかとの話がありました。映画の中にも登場する「映画の視覚言語」「性虐待」「雇用差別」のトライアングルについて打ち出したところ、次はこのテーマで映画を作ってほしいとの依頼があったのです。つまり、これまでの劇映画とは違い、本作は外部からの呼びかけで製作したのです。
――「ブレインウォッシュ」では非常に多くの作品に言及されていますが、このクリップはどのような手順で集めたのでしょうか?
実は、アメリカにはフェアユース(公正利用権)というものがあり、文化的、歴史的な目的などといった五つの点をクリアすれば、映画の短いクリップを使用する権利があります。ただ、「どのように使用するか」は重要で、例えばイングマール・ベルイマンの映画のシーンを「格好よくなるから」などの理由で自分の映画の中で使用する際はお金を払わなくてはいけませんが、本作のように引用し、もともとの映画がある種「変換されている」形であれば、費用もかからないのです。クリップに関して、「こんな使い方をしないでくれ」という監督は誰もいませんでした(笑)。
――社会から隔絶された娼婦を描く「マグダレーナ・ヴィラガ」、そしてラスベガスのカジノの女性ディーラーが主人公の「クイーン・オブ・ダイヤモンド」で主演し、実の妹であり共同製作者であるティンカさんは画家としても活動されていたそうですね。
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