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恋愛においてはよくいるタイプのダメ男だったジョン・レノン 母親の代わりを求める未成熟な男の矛盾【二村ヒトシコラム】

映画.com / 2024年5月18日 16時0分

 そしたら今度は逆に、それまでそれほど悪い印象があったわけじゃないオノ・ヨーコさんにもだんだん腹が立ってきちゃって(笑)、そんな女性2人にはさまれてジョンかわいそうって思ったかというと、そうではなくて、やっぱり「ああ、3人の中でジョンがいちばんダメな奴だ…」って思いましたね。

 くりかえしますけどジョン・レノンは(いまさら僕が言うまでもないですけど)世界中の多くの人の魂を揺らした不世出のミュージシャンで、そして、その反戦思想・平和主義も本当にすばらしいものだと思います。たった今は命を奪われようとしてるわけではなく平和に暮らせている我々こそ、戦争をしたがる権力を利するような変な現実主義におちいらず、愛にみちた世界をせめて空想(イマジン)すべきだ。そうしないとマジで世界はどんどんヤバくなってくと僕も思います。

▼彼の弱さが、共依存の関係を結べてしまうような相手を引き寄せる

 思いますけれど、しかしそういう美しくて大切なことを我々に伝えてくれるジョン・レノンのようなリベラルな人が、男性で、才能があって魅力があると、どうしてこう恋愛では〈ダメな未成熟な男〉になるんでしょうね。いや逆か。依存体質で心が弱い未成熟な男が、たまたま才能と魅力があってモテてると、余裕があるもんだから社会的にはリベラルなことを言うようになるのかな。

 そしてプライベートの恋愛では彼の弱さこそが、共依存の関係を結べてしまうような相手を引き寄せる。共依存に引きつけられる人は、そもそも過去に身近な誰かの醜い強さと権力性に傷つけられてきた人であることも多く(メイさんは映画の冒頭で「私は少女のころ父親に見捨てられていた」と語ります)、そういう人は、リベラルでありつつ自分にだけは弱さを見せてくれるような気がする男の子に魅力を感じてしまうことがある。

 オノ・ヨーコさんてビートルズ時代前期のジョン・レノンを愛する人たちからは評判が悪いんですよね? けれどジョンは、ヨーコに魔術で洗脳されて変わってしまったわけではない(ヨーコが先妻からジョンを奪ったのは事実ですが…。いや、それも関係ない者が簡単に「奪った」とか言っちゃいけないな)と僕は思います。ビートルズのジョン・レノンとして活動するハードな日々がつらくなったジョンは、自分を優しくコントロールしてくれる女性を、つまり母親の代わりを求めていたのかもしれないじゃないですか。(少年期のジョン・レノンが実のお母さんと、複雑でつらい別れかたをしたことは映画「イマジン ジョン・レノン」でも語られていました)

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