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恋愛においてはよくいるタイプのダメ男だったジョン・レノン 母親の代わりを求める未成熟な男の矛盾【二村ヒトシコラム】

映画.com / 2024年5月18日 16時0分

▼母親の代わりを求め、同時に、母親の代わりをしてくれる女性から遠ざかろうとする矛盾

 でも、いざヨーコという支配してくれる女性と結ばれると、こんどはそれに逆らいたくなる。最初から愛着に問題をかかえていたジョンは、わざとヨーコさんにバレるような浮気をくりかえす。さすがのヨーコもイラついて一時的にジョンと距離をとりたくなる。でも完全に別れる気もなかったのでしょう。

 だから自分がジョンと離れているあいだ、彼がおかしな女と無闇にセックスしないよう、ヨーコはメイさんを選んで、ジョンにあてがった。すごいですねオノ・ヨーコ。ヨーコと離れて〈自由に〉なれたように感じて創作意欲を取り戻したジョンは売れる楽曲も盛んに作れるようになり、喜んでメイと飲み歩いていましたが、ひどい酔っぱらいかたをするようにもなる。

 母親の代わりを求める未成熟な男は、母親に呑みこまれることを欲しながら同時に、母親の代わりをしてくれる女性から遠ざかろう、逃げようともがきます。そして自分をコントロールしようとしてこない若い女を求め、しかしそういう女の愛をえると、今度は彼女がお母さんになってくれないという理由で憎みはじめる。そういう男にとって恋愛とはすなわち矛盾です。

▼自分を殴ったジョンのことを、それでもまだ大好きだったメイさん

 メイさんは「ジョンは私を殴っていた」と語ります。この映画がジョン・レノンを告発する意図で作られたのなら、まだいいのです。僕がやりきれない気持ちになったのは、メイさんが、自分を殴ったジョンのことを、それでもまだ大好きだったからです。それはジョン・レノンさんが早く死んでしまった人だからというのもあるんでしょうけど。

 以上が、新しいドキュメンタリー映画「ジョン・レノン 失われた週末」と古いドキュメンタリー映画「イマジン ジョン・レノン」を両方観たことで、ジョン・レノンの熱烈なファンってわけではない僕の頭のなかで勝手にうまれた見解です。きっと別の人は、ちがう見方もするでしょう。

 人を愛することも、(相手もそれを望むのなら)一日中セックスばかりしていることも(ジョン・レノンくらいになっちゃって、もう働かなくていいなら)いいことだと思います。ラブ&ピース。健全な恋愛というものがこの世にほんとに存在するのかどうか僕にはわかりません。人間には健全ではないことを(犯罪でなければ)する権利も、しない自由もあります。ただ、愛してくれる人を殴るのはよくない。ラブ&ピース。それにしてもビートルズの4人が作った曲もジョンが1人で作った曲もどれも本当にいい曲だな。

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